信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 肥満の集団療法に関する研究 ―行動療法の応用―

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.6 Vol.6

 要旨

 肥満者に対し,行動療法を応用した集団療法を施行,参団療法参加群(89名)の成績を非参加肥満対照群(147名)のそれと比較検討を行った.
 その結果
 1)集団療法参加群の体重は83.2±1.3kgが1年間で78.2±1.3kgへ(p<0.001),非参加群でも80.4±0.8kgより79.2±0.7kgへ(p<0.01)と,いずれも推計学的に有意に減量した.しかしながら,前者の体重差は5.0±0.6kgと後者の1.2±0.4kgより,推計学的に有意に大であった(p<0.001).
 2)集団療法参加群では血圧,皮脂厚(上腕部,背部,腹部),血液生化学的検査値(中性脂肪,GPT)も推計学的に有意に低下したが,非参加群では皮脂厚(上腕部),GPTが低下したのみであった.
 3)3年以上経過後も,参加群では6.7±1.5kgと非参加群の3.2±0.8kgより有意に体重維持効果が大であった(p<0.05).
 以上の成績は,行動療法を応用した集団療法が肥満解消に有効であることを示唆している.
 
 
 第二次大戦後40年近くを経過した今日,経済状態の改善による食糧供給の安定と,職場におけるオートメ機器の普及,door to doorの近代化された生活による日常生活における運動量の減少(physical inactivity)は肥満をはじめとする糖尿病,高血圧症,虚血性心疾患などいわゆる運動不足病を増加させている.また,肥満自身,糖尿病,高血圧症,動脈硬化性血管障害(虚血性心疾患など),さらには,痛風や脂肪肝など数多くの成人病の発病増悪因子となっていることも周知の事実となっている 1,2).
 大学生の肥満は直接学業の妨げになることは少ないが,高度な肥満の場合多くの障害が潜在し,さらには,中高年の肥満へ移行し,成人病を惹起させる可能性が大きい.国民の総死因の約40%を脳卒中,心疾患など動脈硬化性血管障害が占めている現在,中高年のみならず,青年期の肥満者の健康管理,健康増進を行うことは意義あることと思われる3).
 われわれはすでに1977年より,行動療法を応用した集団療法の形式で,肥満大学生の食事療法,運動療法の指導を行ってきたが4),これまでの成績を集計するとともに,指導開始3年以上を経過した者に,文書によるアンケート調査を実施し,集団指導の有効性を確認しえたので報告する.

「デサントスポーツ科学」第6巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 佐藤祐造*1, 伊藤章*1, 戸田安土*1, 加藤雄一*1, 押田芳冶*1, 島岡清*1, 渡辺俊彦*2, 宮尾克*3, 熊沢昭子*4, 酒井映子*4
大学・機関名 *1 名古屋大学 総合保険体育科学センター, *2 名古屋大学医療技術短期大学部, *3 名古屋大学医学部公衆衛生学教室, *4 名古屋女子大学

キーワード

肥満者行動療法集団療法