信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 簡易有酸素性作業能力テストからみた中高年マラソン走者の特徴

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.6 Vol.6

 総括

 中高年者では呼吸循環器系の機能に個人差が著しいため最大努力の運動負荷を課するには多くの困難がある.しかし運動に要するエネルギー量を反映する酸素摂取水準の解明は重要な関心事であり,これを明らかにするために簡易有酸素性作業能力テストを作成した.またこれにより中高年マラソン走者の生理的特徴を検討した.被検者には日常,健康に留意している男子中高年者をえらんだ.すなわち,1日およそ20kmのランニング・トレーニングを週3回以上実施しているマラソンランナー,1日およそ4−5kmのジョギング・トレーニングを週6回程度実施して10年以上を経過したジョガー,および運動習慣をもたない座業従事者である.運動負荷には自転車エルゴメーターを用い,呼吸量,呼吸数,酸素摂取量,心拍数,血圧,酸素脈などを経時的変化として記録した.
 簡易有酸素性作業能力テストは,2段階負荷法による運動時心拍数から酸素摂取量を求める間接法とした.運動負荷の設定は,常に一定の物理的仕事量を保証する電気ブレーキにより,自動制御とした.最大酸素摂取量の推定式により得られた値の誤差変動は5.74%と小さく,再現性が高かった.
 これをもとに中高年マラソン走者の運動にともなう呼吸循環機能の変化を観察した.最大酸素摂取量はexhaustion時に得られ,ランナー3247ml/min,ジョガー2796ml/minおよび非鍛練者1950ml/minであった.運動とともに増加した心拍数は,exhaustion時にランナー176beats/min,ジョガー181beats/minおよび非鍛練者,168beats/minに達した.平均血圧の増加は鍛練,非鍛練による差が認められ,前者では11.6%の増加であったが後者では41.4%という大きな増加を示した.
 以上のことから,有酸素性作業能力テストによれば鍛練者では,大きなperfbrmanceを支えるエネルギー需要の増大を,高い酸素摂取水準でまかなっていることがあげられる.それは高い酸素摂取率と大きな酸素脈に由来し,こうしたすぐれた酸素運搬系能力が中高年マラソン走者の特徴となっていることが推察された.

「デサントスポーツ科学」第6巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 芝山秀太朗, 深代泰子, 深代千之
大学・機関名 鹿屋体育大学

キーワード

有酸素性作業能力中高年者マラソン走者生理的特徴