信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 乳・幼児の運動機能の発達および発達量を規定する要因の追跡的検討

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.6 Vol.6

 要旨

 乳・幼児の運動機能の発達とその発達量を規定する要因を,同一被験者の追跡的資料を中心に検討した.被験者は0歳児から6歳児までで,2年間の合計8,222名,内,追跡児1,522名で,解析は,主に三回帰分析と因子分析が用いられた.その結果得られた主な結論は次の通りである.
 1.性別・年齢別にみた体格や運動能力の発達の傾向
 1)身長の年間発達量は2歳児までは大きく,3歳児以後はそれより漸減する。体重は比較的恒常的に増えるが,3歳児までは女児が大きく,4,5歳児では殆んど男女の差がなくなる.
 2)運動能力の年間発達量から抽出された運動能力因子は,男女各8因子であるが,男女に共通するものは,協応性,平衡性,敏しょう性・筋持久性・指の協応性一律動性,柔軟性に特徴づけられる6因子群である.そして,因子得点からみた発達傾向を類型化すると,年齢と共に発達量が減少する因子,すなわち下降型を示す運動能力因子は,男児の協応』性因子,平衡性因子である.上昇型を示すのは,女児の目と手の協応性因子.V字型を示すのは,男女の指の協応性一律動性因子,敏しょう性因子,男児の指の協応性因子,筋持久性因子,女児の柔軟性因子.八型を示すのは男児の動的律動性,柔軟性,女児の協応性,筋持久性,平衡性,筋力の各因子である.また,年間発達量からみた発達の型には性差がみられる.
 2.3〜6歳児の運動能力の年間発達量を規定する要因
 1)エネルギー系1(走・跳・投からみた基礎運動能力)の年間発達量は,男女共,エネルギー系2と調整力の年間発達量が大きいほど大きい.また,母乳で育ち,TV視聴時間が短かく,早くから歩き始めた子ほど大きい.
 2)エネルギー系2(筋持久力,筋力,瞬発力)の年間発達量は,男女共エネルギー系1の年間発達量が大きいほど大きい.また男児では安全に遊べる道路があり,歩いて保育園に通い,女児では,父と平日に長時間遊ぶほど年間発達量が大きい.
 3)調整力1(敏しょう性,平衡性,全身協応性,動的律動性)の年間発達量は,エネルギー系1や調整力2の発達量が大きいほど,そして年齢が小さいほど,また,母と長時間遊ぶほど,TV視聴時間が短かいほど大きい.
 4)調整力2(目と手の協応性,指の協応性)の年間発達量は,エネルギー系1,調整力1の年間発達量が大きいほど,そして年齢が小さいほど大きい.
 5)柔軟性の年間発達量を規定する要因は,本研究で調査した36要因では,一定の傾向をみつけることができなかった.

「デサントスポーツ科学」第6巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 丹羽劭昭*1, 長沢邦子*1, 堀葉子*1, 庄野真理子*1, 竹垣幸子*2
大学・機関名 *1 奈良女子大学, *2 育徳保育園

キーワード

乳・幼児運動機能発達量エネルギー系調整力柔軟性