信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 運動処方のための脂質代謝

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.6 Vol.6

 要旨

 ヒト並びに動物を用いて,運動処方のための脂質代謝を種々な脂質の脂肪酸組成の立場から検討し,次のような結果を得た.
 1)ヒトでは38km歩行1日後に血清TGの脂肪酸に有意な不飽和化が認められた。5分走に比べ5km走ではTG,FFAに脂肪酸組成の変動が認められた.したがって,多くの遊離脂肪酸を動員させる運動量は運動処方のための脂質代謝を改善させる可能性がある.
 2)ラットのrepetitive swimmingでは,血清,肝,骨格筋のTG,および脂肪組織FFA並びにtotal PLFAにC₁₆とC₁₈₌₁あるいはC₁₈₌₂間で桔抗的動揺があった.心筋cardiolipinのリノール酸組成は遊泳回数に伴って著しく増加した,したがって遊泳により細胞構成脂質に生化学的変化が生じることが得られた.しかし,phosphatidylethanolamine(PE),やphosphatidylcholine(PC)の脂肪酸組成には変動はなかった.
 3)潅流心臓では,種々な脂肪酸(C₁₄,C₁₆,C₁₈,C₁₈₌₁,C₁₈₌₂)は濃度を高めると洞結節に起因した不整脈をおこし,心臓の生理機能を説明づけるためにはこれら脂肪酸の競合的作用を考慮すべきである.
 これらの結果から,脂肪酸組成の変化は脂質代謝の改善を示す1つの指標となり,生理機能と生化学的細胞構成脂質を関連づけることになるであろう.

「デサントスポーツ科学」第6巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 岩垣丞恒*1, 風見昌利*1, 渡辺雅之*2, 小林啓三*3
大学・機関名 *1 東海大学, *2 東京学芸大学, *3 東京慈恵会医科大学

キーワード

運動処方脂質代謝歩行repetitive swimming細胞構成脂質潅流心臓脂肪酸組成