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PDF 食塩摂取が骨格筋タンパク質代謝に及ぼす影響について その1 食塩摂取が骨格筋肥大及び骨格筋委縮に及ぼす影響について

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.7 Vol.7

 食塩水の摂取が体タンパク質代謝に影響を及ぼすことが示唆されていることから食塩摂取が代償性筋肥大と筋不活動による筋の萎縮に及ぼす影響について検討した.高濃度の食塩摂取群の体重の増加量は他の群に比べ低い値をしめした.このことは高濃度の食塩摂取により飼料の摂取が他の群に比べ低い値を示し結果的に体重の減少を引き起こした主な原因と思われる.骨格筋の肥大,骨格筋の萎縮に対する食塩摂取の影響をみる実験は食塩摂取が体重の増加量に確実に影響を及ぼした10日目から行った.ヒラメ筋の代償性筋肥大はすべての群でみられた.しかしながら1.8%食塩摂取群で速筋である足底筋の代償性肥大は統計的に有意な増加はみられなかった.体タンパク質異化の指標である血中尿素窒素は食塩水の摂取群で低い値を示した.血清ナトリウム濃度は必ずしも食塩摂取量を反映しておらず逆に0.9%食塩摂取群では統計的に有意に低い値を示した.血清カリウム値もナトリウム同様食塩負荷群で有意に低い値を示した.
 筋不活動による骨格筋の萎縮に対し食塩水の負荷はどの群でも有意な変化がみられた.このことから食塩の摂取は筋不活動の筋萎縮に対して抑制的に働くものと思われる.以上の結果から食塩の摂取は細胞の浸透圧に影響を及ぼすだけでなくタンパク質の分解にも抑制的に作用することが示唆された.しかしながら高濃度の食塩水はタンパク質合成に対しても抑制的に作用しているものと示唆された.また0.9%食塩摂取群で血中尿素窒素が特に低い値を示したことは塩化ナトリウムの生理食塩液濃度およびナトリウム等のイオンの増大がタンパク質代謝に及ぼす影響の重要性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第7巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 山田茂
大学・機関名 東京大学

キーワード

食塩水の摂取体タンパク質代謝筋肥大筋不活動