信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 新しい「おもりウェアー」の開発

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.7 Vol.7

 要旨

 練習中における全身の運動強度を高める目的で,新しいウェイトジャケット(ウェイトスリーブ)を開発した.ウェイトスリーブは半袖のジャケットで,その胸,肩,上腕部に柔軟性を有するおもり(からみ合わせた繊維状の鉛)が縫いつけられている.
 ウェイトスリーブを着用することによる効果を従来の装着用重量物(ウェイトベストまたはウェイトパンド)と比較した.まず,全身の運動強度を評価するために,10種目の運動についてそれぞれ次の3条件における酸素摂取量を測定した.(1)無負荷,(2)ウェイトスリーブ(2kg)着用,(3)ウェイトベスト(2kg)着用.次に,動作速度に及ぼす装着重量の影響を調べるために,異なる重量条件でウェイトスリーブ着用時またはウェイトバンド装着時の上肢水平仲度速度を測定した.さらに,上肢長軸回転動作時に,装着したウェイトスリーブまたはウェイトバンドが上肢に及ぼす力をおもりにつけた加速度計によって調べた.
 結果は次のとおりであった.
 (1)下肢を主とする運動においては,ウェイトスリーブもウェイトバンドもその着用による酸素摂取量の増加率は5〜15%でほぼ同等であった.それに対し,上肢または体幹を主とする運動においては,ウェイトスリーブ着用による酸素摂取量の増加率は8〜28%を示し,ウェイトベスト着用による増加率より5〜15%大きい値を示した.
 (2)手首に装着したウェイトバンドは,数百グラムでも上肢の動作速度を大きく低下させたのに対し,ウェイトスリーブは片袖2kgまでの着用であれば上肢の敏捷性をあまり低下させなかった.
 (3)ウェイトスリーブは袖構造をしているために巻きつけ式のウェイトバンドに比べ上肢をねじる力が小さかった.
 以上の結果から,ウェイトスリーブを着用することによって上肢の動作があまり制約を受けずに全身の運動強度を高められることが示唆された.したがって,通常のスキル練習にウェイトスリーブを利用すれば,技術の向上とともに有酸素性パワーや筋力に対するトレーニング効果を期待することができる.

「デサントスポーツ科学」第7巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 蛭田秀一, 島岡みどり, 鶴原清志, 小林寛道
大学・機関名 名古屋大学

キーワード

運動強度ウェイトジャケットウェイトスリーブ