信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 高校スポーツ選手におけるスポーツ筋症と鉄代謝異常に関する研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.8 Vol.8

 要旨

 スポーツの普及につれ,スポーツ医学の研究も盛んになっている.スポーツと貧血の関係も重要視されているが,スポーツクラブ所属高校生においては学校教育や保健衛生の面より,これらの解析は重要である.今回,われわれは前回の報告3)に加え,赤血球フェリチン,筋型アルドラーゼ,CRK,ミオグロビンを運動後に測定し,併せて自覚症状,学力などにつき検討して高校スポーツ選手の特徴を検索し以下の結果を得た.
 1)血液所見(赤血球数,血色素量,赤血球容積,白血球数と分画,血小板数)は正常値内にあったが,赤血球恒数で低色素性を示すものが,約20%に認められた.
 2)鉄代謝上の所見では血清鉄,総鉄結合能は正常範囲内にあったが,第1学年で総鉄結合能の増加しているものが26.2%に認められた.血清フェリチン値では第1,第2両学年ともに正常値以下のものが大部分であり,スポーツクラブ所属高校生はほとんど全例が鉄欠乏状態にあることが明らかとなった.
 3)赤血球フェリチンの検討でも鉄欠乏状態を反映して大部分は低値を示した.
 4)筋肉由来のCPK,M-ALDは上昇を示すものが多く,正常値以上であった.しかし,筋疾患を疑わせるほどの高値例は認めなかった.血中ミオグロビン値は第1学年で16.5%と高値を示していたが,第2学年では1名(2.8%)のみであった。
 5)アンケート調査では過半数のものは学力,集中力,疲労度に変化はないとしているが,約20%に学力の低下,集中力の低下,疲労感を自覚していると考えられた.
 以上の結果より高校スポーツ選手では自覚症状は少ないが,全例鉄欠乏状態にあり,これが学校生活に影響していることが示唆され,さらにこれに関係して,スポーツ筋症ともいえるごとき状態にあり,何らかの対策が必要であると考えられた.

「デサントスポーツ科学」第8巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 宮崎保, 桜田恵右, 浜田結城, 大原行雄, 前吉俊, 田中淳司
大学・機関名 北海道大学

キーワード

スポーツ医学貧血高校生鉄代謝