中高年の水泳初心者にとって水泳は安全かつ有効か?
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.9 Vol.9】
要旨
中高年者の水泳初心者に対する水泳運動の安全性と効果を検討するため,水泳教室初級クラスに参加している中高年を対象に実験を行った.実験1は25m泳げない群(以下群),男1,女2(36〜64歳),および25〜50m泳げる群(以上群),男2,女2(42〜80歳)の二群に分けて実施した.水泳中の心拍数(HR)から推定した運動強度(%VO₂max)は以下群ではほぼ40〜80%VO₂maxであった.一方,以上群では教室参加中の48%の時間が40%VO₂max未満であった.3例以外は収縮期血圧は200mmHg以上にはならなかった.実験2は水泳初心者,男4,女7(45〜80歳)に対して,水泳運動を始めてから少したった時点と,その後に計2回トレッドミル上で症候限界性最大負荷テストを行った.体重,CPK,TG,T-chは変化しなかったが,皮下脂肪厚合計は減少した.その減少量は最初の皮下脂肪厚に関係し,運動量とは関係なかった.VO₂maxの増加率によって,不変群と増加群に分けた.二群は水泳時間および1時間7000歩として計算した歩行時間に差があり,とくに両者の合計は増加群が80分以上であったのに対し,不変群は70分未満と明らかな差を認めた.結論は以下のとおりである.
1)水泳は中高年の初心者にとって安全である.
2)皮下脂肪厚の減少は40%VO₂max強度以上で60〜90分以上,週1回運動することで得られ,その程度は当初の肥満度に関係している.
3)運動処方は各人の日常の運動量に基づいてなされるべきである.少なくとも中高年者のVO₂maxを増加させるためには以下の処方が勧められよう.a)1日8000歩+40%VO₂max以上,60〜90分間以上で週1回の運動,b)6000歩+同じ運動で週3回.
「デサントスポーツ科学」第9巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
中高年者の水泳初心者に対する水泳運動の安全性と効果を検討するため,水泳教室初級クラスに参加している中高年を対象に実験を行った.実験1は25m泳げない群(以下群),男1,女2(36〜64歳),および25〜50m泳げる群(以上群),男2,女2(42〜80歳)の二群に分けて実施した.水泳中の心拍数(HR)から推定した運動強度(%VO₂max)は以下群ではほぼ40〜80%VO₂maxであった.一方,以上群では教室参加中の48%の時間が40%VO₂max未満であった.3例以外は収縮期血圧は200mmHg以上にはならなかった.実験2は水泳初心者,男4,女7(45〜80歳)に対して,水泳運動を始めてから少したった時点と,その後に計2回トレッドミル上で症候限界性最大負荷テストを行った.体重,CPK,TG,T-chは変化しなかったが,皮下脂肪厚合計は減少した.その減少量は最初の皮下脂肪厚に関係し,運動量とは関係なかった.VO₂maxの増加率によって,不変群と増加群に分けた.二群は水泳時間および1時間7000歩として計算した歩行時間に差があり,とくに両者の合計は増加群が80分以上であったのに対し,不変群は70分未満と明らかな差を認めた.結論は以下のとおりである.
1)水泳は中高年の初心者にとって安全である.
2)皮下脂肪厚の減少は40%VO₂max強度以上で60〜90分以上,週1回運動することで得られ,その程度は当初の肥満度に関係している.
3)運動処方は各人の日常の運動量に基づいてなされるべきである.少なくとも中高年者のVO₂maxを増加させるためには以下の処方が勧められよう.a)1日8000歩+40%VO₂max以上,60〜90分間以上で週1回の運動,b)6000歩+同じ運動で週3回.
「デサントスポーツ科学」第9巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 三浦次郎*1, 鈴木政登*1, 福沢一力*2 |
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大学・機関名 | *1 東京慈恵会医科大学, *2 毎日スポーツ企画株式会社 |
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