信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF ヨーガ呼吸の生理学的特性

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.9 Vol.9

 要旨

 紀元前数世紀にインドで発祥したヨーガが現在のわが国の健康法の一つとして関心を集めている.ヨーガは身体を強化し,自己統制を可能にすることを目標とした健康法である.
 本研究では,まず日常習慣的にヨーガを実施している者に“ヨーガの効用”に関するアンケート調査をした.次いで,ヨーガ熟練者と未熟練者を対象に,ヨーガ実施中の呼吸循環機能ならびに自律神経機能変化を調べ,ヨーガが健康に対しどのように貢献するかを考えることにした.
 実験の結果は次のとおりである.
 1) ヨーガの効用に関するアンケート調査(N=75)では,身体が軽く動きやすい,柔軟性が増し,肩コリ,腰痛が薄らぎ,精神面でも明るくなり,物事に集中できるようになったことなどがあげられ,現代病と言われる腰痛,肩コリ,ストレスなどの解消に役立っていることが推察される.
 2)ヨーガ中の呼吸循環機能を調べた結果,未熟練者のO₂摂取量(VO₂)が有意(p<0.01,p<0.05)に高かったが,ヨーガ中のVO₂の変動は大きく不規則であった.熟練者の場合は,リズミカルで変動も小さかった.これはヨーガ動作と呼吸の調和の良し悪しが影響しているためと考えられる.
 3) 心電図R−R間隔の変動(CVR-R)を指標とした自律神経機能変化からみると,熟練者が副交感神経機能冗進状態を示し,未熟練者は交感神経機能冗進状態を示した.これは自己コントロールができる熟練者と未だ不十分で緊張が残っている未熟練者との相違であろう.
 4)ヨーガ実施後の血圧は,最大・最小血圧ともに低下する傾向がみられた.
 アンケート調査や実験の結果から,日常習慣的に行うヨーガは爽快感を与え,精神的ストレス解消に貢献しているようである.また,CVR-Rを指標としたヨーガ中の自律神経機能変化や心拍数,VO₂などから,ヨーガによって膜想境に達するには熟練を要し,本研究ではヨーガ歴7年以上の者にその傾向がみられた.したがって,ヨーガによって精神統一することも可能ではないかと思われる.

「デサントスポーツ科学」第9巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 坂木佳寿美*1, 鈴木政登*2, 飯島好子*2, 井川幸雄*2, 塩田正俊*2, 寺本紀子*3
大学・機関名 *1 東京女子医科大学, *2 東京慈恵会医科大学, *3 ヨーガ教室

キーワード

ヨーガ自律神経機能呼吸