信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 器械運動の効果的な学習・指導のための補助用具の試作とその応用について

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.11 Vol.11

 本研究では,マットの転回運動である腕立て前方転回のための補助ベルトが試作され,11・12歳の男女41名の小学生を対象に授業中に適応された.その結果は,以下のようである.
 1.対象とした児童には,背中や腰を伸ばした姿勢で着地のできるハンドスプリングの完成パターン(D)を示す児童は一人もいなかった.およそ27%の児童が,腰を曲げて着地する腕立て転回の未完成パターン(C)を示した.他(73%)は,背中をマットに着ける前転系の運動パターン(AおよびB)であった.
 ここでは,われわれは腕立て転回の未完成パターン(C)を示す児童にのみ焦点をあてた.われわれの知見からは,パターンCを示す児童には,着手から離手にかけて肩関節を伸展することが最も重要であることが指摘できる.
 2.補助ベルトは,腰に巻き付け,彼らが倒立する間に彼らの肩関節伸展を助けられるように考案された.
 補助ベルトは,プラスチック製バックルと幅広の緩衝用腹帯をつけた細幅のナイロン製ベルト,ならびに綿製ロープによって構成されている(図5,269ページ参照).2本の綿製ロープは実施者の腰の両側でナイロン製ベルトに結ばれる.それらの綿製ロープは実施者の両側に立っている2人の補助者によって握られ,実施者が倒立位になった時に,実施者を持ち上げるために用いられる.
 児童が補助ベルトを使用したときに記録された筋電図ならびにビデオの映像から,実施者の肩関節への負荷が軽減し,フォームも高い姿勢で離手できるようになった.
 3.補助ベルトを用いた2時間の学習後には,いずれの児童も着地姿勢が改善された.アンケートによる調査結果によると,彼らは補助ベルトがハンドスプリングの技術習得にとって効果的な用具であると確信していた.

「デサントスポーツ科学」第11巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 大谷光雄*1, 吉澤正尹*2, 宗倉啓*2, 内田達男*3, 田邊浩之*4, 片山正徳*5
大学・機関名 *1 福井県春江町立春江小学校, *2 福井大学, *3 福井県武生市立国高小学校, *4 福井県立武庫高等学校, *5 福井県鯖江市立中央中学校

キーワード

マットの転回運動補助ベルト小学生ハンドスプリング前転系の運動パターン