信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 運動時の作業能力と快適性に関する温熱生理学的研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.12 Vol.12

 運動時の作業能力と快適性との関連を検討するために,2,3の実験を行った.
 10名の成人男子を被検者として,運動時に被検者自らが最も快適となる室温(Tpref)を,人工気象室の室温制御装置を使って調節させ(オペラント行動),運動時の快適温の動態について観察した結果では,直腸温(Tre)や鼓膜温の上昇に伴って,低いTprefを快適として選択した.また,運動強度が強いほど低いTprefを選択し,さらに43℃の温水に下肢を浸して暑熱を負荷した時のTprefは,運動時とほぼ同様な傾向を示した.また,定温下運動時のTreの変化はTpref下の運動と同じ上昇を示した.このような運動時のオペラント行動や体温反応様式から,運動時の体温上昇はセット・ポイントの移動によるものではないと推論した.
 正課時の体育の授業時に,男女81名の学生を対象として,踏み台運動を行った時の温冷感ならびに快適感を,着衣の状態で長そで群と半そで群にわけて比較した.また,ステップテスト時の心拍数(HR)の変動からmax METSとの関係を求めて,Vo₂の推定を行い,両者の比較を行った.運動終了後,長そで群で「暑い」,また「不快」との答える割合が増すが,Vo₂などには両群の差は認められなかった.
 3名の成人男子を対象として30分間のトレッドミル走行時の体温調節反応も裸体と着衣時と比較して,顕著な違いは認められなかった.
 以上のことから,運動時の体温上昇に伴って「冷」をより快適とするが,不快感の増大は必ずしも深部体温や代謝系の不全を反映したものとは言えず,中核温と皮膚温との温度勾配が重要なものになると思われるが,さらに今後,系統的な検討が必要と思われる.

「デサントスポーツ科学」第12巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 朝山正巳*1, 長谷川豪志*2, 大貫義人*3, 辻田純三*4, 平田耕造*5
大学・機関名 *1 中京女子大学, *2 京都産業大学, *3 山形大学, *4 兵庫医科大学, *5 神戸女子大学

キーワード

温熱生理学的運動作業能力快適性体温調節反応