「立位体前屈」と「上体そらし」の再検討
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.12 Vol.12】
行動体力の一要素である柔軟性は,体力テストの「立位体前屈」と「伏臥上体そらし」によって測定されるのが一般的であるが,果してこの2項目の測定値から「身体が硬い」と言う結論を引出し得るかどうかを検討した.その方法としては児童生徒の全国調査である文部省の体力・運動能力調査報告書を用い過去のものと現在の傾向を比較検討した.また,この両テスト項目が単なる関節の可動範囲の測定ではなく,自力による体幹の屈曲・伸展であるところから座位におけるアイソメトリックな腹部および背部の筋力測定を行った.そして,両テスト実施時の腹部および背部の筋電図を記録し,テスト成績に対する阻害要因としての筋のIa抑制機構の関与,あるいは向上要因としてのIb抑制機構の関与について検討した.その結果,身長の伸びに対して座高の伸びがそれにともなわないので下肢長の伸びが大きいために立位体前屈の成績が低下傾向にあると考えられ,腹部の筋力は前屈には無関係だが,背部の筋力は伏臥上体そらしと有意な相関関係が認められた.また,立位体前屈時の背部の筋による抑制は筋電図からは観察されなかった.むしろ下肢からの痛みが陽害要因として自覚された.アイソメトリックな上体おこし運動を30秒間実施させた後の立位体前屈の成績は向上した.それはIb機構が関与していると思われた.伏臥上体そらしでは身長や座高などの成長がその成績を決定しており,背部の筋の特性を表していると考えられた.
「デサントスポーツ科学」第12巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
「デサントスポーツ科学」第12巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 渡辺雅之*1, 永田瑞穂*1, 矢野博己*1, 長沢靖夫*1, 関和彦*2 |
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大学・機関名 | *1 東京学芸大学, *2 国際武道大学 |
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