信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 天然繊維の機能変換によるスポーツ用衣料素材の開発

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.12 Vol.12

 本研究の内容は二様である.一つは,羊毛繊維の有するはっ水性と吸水性という相反する性質を損なうことなく,防縮性を賦与することを試みた.もう一つは,綿繊維独特の自然の風合いや繊維性能を損なうことなく,位置選択的に内部を親水化し,より吸湿性に富むスポーツ用衣料素材への機能変換を試みた.
 前者に関しては,クチクル細胞聞に存在する親水性の細胞膜複合体(CMC)を,多官能エポキシ化合物,Glycerol Polyglycidyl Ether(GPE)を用いて架橋・固定化することを試みた結果,共触媒としてNa₂S₂0₅,Na₂SO₃などの還元剤を用い,濃厚食塩水中で上記の反応を行うと,羊毛繊維の有するはっ水性と吸水性を損なうことなく,防縮性を賦与することが可能なことを見い出した.
 後者に関しては,イオン性のモノクロロ酢酸と非イオン性の2,3‐エポキシプロパノールを用いてその可能性を検討した結果,いずれの場合も,綿繊維の位置選択的内部親水化は可能で,カルボキシメチル化の場合は置換度(DS)が約0.1,ジヒドロキシプロピル化の場合はDS=0.1〜0.2で,未処理綿に比べて含水率が50〜60%高い綿繊維が得られることを見い出した.しかし,イオン性のカルボキシメチル基の単位当りの吸水化能は,非イオン性のジヒドロキシプロピル基に比べて約10倍程度優れており,本研究目的には,カルボキシメチル化の方がより適していることが判明した.

「デサントスポーツ科学」第12巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 宮本武明*1, 辻井敬亘*1, 小野木禎彦*2, 水谷千代美*2, 坂部寛*3
大学・機関名 *1 京都大学, *2 武庫川女子大学, *3 京都工芸繊維大学

キーワード

羊毛繊維防縮性綿繊維Glycerol Polyglycidyl Ether(GPE)置換度カルボキシメチル化