信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF モータースポーツにおける特殊環境条件の人体生理に及ぼす影響(Ⅱ)

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.12 Vol.12

 モータースポーツの競技特性を各種の体力測定,レース中の心機能,レース中にドライバーが受ける負荷(加速度および騒音)等を測定し,その特性については前報(デサントスポーツ科学,1990 1))において報告した.今回はレース中にドライバーが受ける負荷について,血液生化学的な面から検討した.対象は,F-3,F-3000,グループCなどのレーシングドライバー20名である.血液の検査項目は,コルチゾル,レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系,アドレナリン,ノルアドレナリン,その他各種ホルモン,酵素,電解質などである.
 その結果,通常では安定しているコルチゾルの血中濃度が,レース後非常に高い値を示した.特にスピードが速く,レース時間が長い場合に高値を示す傾向があった.一方,ACTHの値は,レース後でも正常範囲内の変化であった。レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系は,いずれもレース後に極めて高い値を示した.また,乳酸値,FFA,ミオグロビンなどに血中濃度の上昇が見られた.他の血液生化学的所見は電解質,肝機能,腎機能などいずれも正常範囲であった.
 以上の結果から次のようなモータースポーツの競技特性があげられる.
 1.精神的なストレスは,心拍数の増加,コルチゾル,レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系,アドレナリン,ノルアドレナリンなどの血中濃度の上昇からみて,最も高度な部類に属すると考えられた.2.運動量としては,中等度ないしやや高度であろう.3.上位のクラスでは,下位のクラスより生体が受ける負担は大きい.レース中のスピードが速いほど,またレース時間が長いほどそのストレスが大きいといえる.レースのストレスは,サーカディアンリズムに影響を与えるほど大きい.

「デサントスポーツ科学」第12巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 大畠襄, 遠藤陽一, 白旗敏克, 河野照茂, 久富沖, 小野寺昇, 佐藤美弥子
大学・機関名 東京慈恵会医科大学

キーワード

モータースポーツドライバー受ける負荷血液生化学的