信州大学 繊維学部技術データベース

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PDF 有酸素運動による酸素障害の可能性と抗酸化ビタミンの動態について

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.15 Vol.15

 長時間に及ぶ有酸素運動による過酸化障害の可能性と,抗酸化ビタミンの動態牽,トライアスロン競技をモデルとして検討した.その結果,過酸化障害の指標の一つである血清過酸化脂質(TBARS)は,トライアスロン競技前に比して,競技直後に有意な低下を示した.また血清ビタミンEは競技前に比べ,競技直後に有意な増加を示した.
 また血清ビタミンCも明らかな増加を示した.したがって,ビタミンEの増加は,ビタミンCによるビタミンEの再生ならびに脂肪組織等の体内ビタミンE貯臓部位からの血中への動員によるものと考えられる.一方血清β−カロチンは,競技前に比べ競技直後に有意に低下した.これはフリーラジカル消去のため,β−カロチンが消費された結果であり,この結果は,長時間有酸素運動時に過酸化の初期反応が起こっていたことを示唆するものである.さらに,この血清β−カロチンの変化率と血清TBARSの変化率との問には,有意な正相関が認められたことにより,血清TBARSの低下には一部β−カロチンの消費が関与している可能性が考えられる.しかし,競技後に血清TBARSが競技前のレベルよりさらに低下したことは,過酸化物の生成抑制だけでなく,運動により過酸化物の分解や排泄が亢進した可能性を示しているとも考えられる.
 以上より,長時間有酸素運動においては,抗酸化ビタミンをはじあとする生体の抗酸化システムによる防御反応によって,過酸化障害が抑制されているものと考えられた.

「デサントスポーツ科学」第15巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 川合ゆかり*1, 勝村俊仁*1, 大谷由美子*1, 高波嘉一*1, 丸山千寿子*2
大学・機関名 東京医科大学

キーワード

有酸素運動過酸化障害抗酸化ビタミン血清過酸化脂質(TBARS)