信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 小児気管支喘息児の運動耐容能の検討

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.15 Vol.15

 気管支喘息児20名に対し,天候と喘息発作に関係を感じるかどうかのアンケート調査を行い,天候の影響を感じているA群11名(重症8名,中等症2名,軽症1名)と感じていない13群9名(重症2名,軽症7名)に分けた.天候の影響を感じやすい群では,重症喘息児が多かった(73%).人工気象室内を,気温23℃,湿度50%に保ち,気圧のみを大気圧から6.7hPa/minの割合で845hPa(標高1,500m)まで減圧する実験を,喘息児15名(A群9名,B群4名)に対し行った.また,大気圧から20hPa/minの割合で1,230hPa(水深−2m)まで加圧する実験を,喘息児11名(A群5名,B群6名)に行った.
 目標の低圧または高圧環境下で,対象患児にRAMP運動負荷を行わせ,呼吸代謝および運動後の肺機能を測定した.全例別日に,気圧を変化させない大気圧環境で同じ検査を行い,気圧変化させた時の結果と比較した.
 A群の運動後15分のFEV1の変化率は,大気圧環境下で+0.92%,低圧環境下で-6.46%(P=0.06)と,減圧により肺機能が低下する傾向を示した.B群では差は認められなかった.加圧による変化は両群ともに認められなかった.
 心理学的検査として,気圧変化を感じているかどうかの自覚症状チェックリスト,STAI(状態不安度テスト),フリッカーテスト(集中力判定テスト)を行った.大気圧に比べ,低圧,高圧環境ではともに大きな変動を示し,環境変化に対するストレスを,より強く感じる喘息児の存在が認められた.気圧を変化させた時の肺機能の変化はわずかであったが,心理的検査では,大きな変化が生じたことを考え合わせると,喘息児は気圧変化に対して高い感受性を持っていると思われる.
 以上より,気圧単独の変化が喘息児の喘息発作を誘発する因子となり得ることが推察された.

「デサントスポーツ科学」第15巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 木村康子*1, 飯倉洋治*2, 秋本憲一*2, 松田秀一*3
大学・機関名 *1 都立母子保健院, *2 国立小児病院研究センター, *3 東京慈恵会医科大学

キーワード

気管支喘息天候喘息発作RAMP運動負荷肺機能