踵の緩衝機能の加齢的変化について
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.16 Vol.16】
ヒトの踵下には10mmを越える脂肪層と,それを包む筋・結合組織がよく発達し,歩行やランニング中の接地時に身体が受ける衝撃を緩和吸収する機能を司っている15).この組織の緩衝特性を機械的に測定する試みは,これまでにもいくつか行われてきた.たとえば,Cavanaghら1)は,振子式の打撃装置を用いて踵に衝撃を与えた際の加速度を測定している.
本研究者らは,自由落下式の打撃装置を考案し青年や子供を対象とした研究を行ってきた10,11).その結果,青年では踵部への衝撃力による入力エネルギーの約77〜79%程度がこの組織で吸収されることが明らかになった.また,子供ではそれが74%程度となり,青年の値より低くなることも明らかとなった.
一般に生体の諸機能は,子供では低く,20歳代でピークとなり,その後徐々に低下することがよく知られている15).したがって,踵の緩衝機能も生体の老化に伴って変化するものと推察される.Steinbach and Russell 18)は,X線を用いて踵の厚みを推定した結果,加齢に伴う厚みの変化は認められなかったと報告している.しかしながら,厚みよりも踵本来の機能である緩衝機能が,老化によってどのように変化するのかについては,これまで一切報告されていない.
近年,わが国も急速に高齢化の波が押し寄せ,高齢者も健康維持の手段としてジョギングやウォーキングなどをはじめとする,さまざまなスポーツ活動に積極的に参加するようになってきた.このような中で,運動に身体と地面との間で発生する衝撃から,身体を保護する器官となる踵部の脂肪組織の機能が,老化に伴ってどの程度変化するのかを知ることは,彼らのための靴や運動用具,体育館や家屋の床面やグラウンドなどを設計するうえで,また,運動様式や強度などを選択するうえでもきわめて重要であると思われる.
そこで本研究では,本研究者らが開発した衝撃試験器を用いて,高齢者の踵の緩衝機能を調べることを目的とした.さらに,彼らの普段の歩行運動中に踵部が受ける力作用についても検討を試みた.
「デサントスポーツ科学」第16巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
本研究者らは,自由落下式の打撃装置を考案し青年や子供を対象とした研究を行ってきた10,11).その結果,青年では踵部への衝撃力による入力エネルギーの約77〜79%程度がこの組織で吸収されることが明らかになった.また,子供ではそれが74%程度となり,青年の値より低くなることも明らかとなった.
一般に生体の諸機能は,子供では低く,20歳代でピークとなり,その後徐々に低下することがよく知られている15).したがって,踵の緩衝機能も生体の老化に伴って変化するものと推察される.Steinbach and Russell 18)は,X線を用いて踵の厚みを推定した結果,加齢に伴う厚みの変化は認められなかったと報告している.しかしながら,厚みよりも踵本来の機能である緩衝機能が,老化によってどのように変化するのかについては,これまで一切報告されていない.
近年,わが国も急速に高齢化の波が押し寄せ,高齢者も健康維持の手段としてジョギングやウォーキングなどをはじめとする,さまざまなスポーツ活動に積極的に参加するようになってきた.このような中で,運動に身体と地面との間で発生する衝撃から,身体を保護する器官となる踵部の脂肪組織の機能が,老化に伴ってどの程度変化するのかを知ることは,彼らのための靴や運動用具,体育館や家屋の床面やグラウンドなどを設計するうえで,また,運動様式や強度などを選択するうえでもきわめて重要であると思われる.
そこで本研究では,本研究者らが開発した衝撃試験器を用いて,高齢者の踵の緩衝機能を調べることを目的とした.さらに,彼らの普段の歩行運動中に踵部が受ける力作用についても検討を試みた.
「デサントスポーツ科学」第16巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 木下博*1, 小川武載*2, 川合悟*3, 生田香明*1, 村瀬智彦*1 |
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大学・機関名 | *1 大阪大学, *2 兵庫教育大学, *3 帝塚山短期大学 |
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