信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF ウォ―ムアップ終了後の待ち時間がウォームアップ効果の持続性に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.18 Vol.18

 本研究では,競技会において実施されているウォームアップ(WU)およびWU終了後の待ち時間を反映した実験状況を設定し,WU終了後の待ち時間がWUにより得られる効果の持続性に及ぼす影響について検討することを目的とした.そのため,競技力の高い男子大学競泳選手7名を対象として,競泳選手が競技会で実施しているWUを模倣して構成した中等度のWUを実施後20分および60分の待ち時間を設定する条件(WM20およびWM60),高強度のWUを実施後60分の待ち時間を設定する条件(WH60)および関連WUを行わない条件(NW)において,規定泳速で実施される高強度の200mクロール泳(CS)実施時の生理学的変数に及ぼす影響について検討を加えた.
 その結果,血中乳酸濃度(La;3mM程度),心拍数(HR;160beats・min⁻¹程度),RPE(14程度)および直腸温の相対的増加量(ΔTrpreWU;0.7℃程度)を適度な水準に上昇させる中等度のWU(WM20およびWM60)実施後では,CS実施後のLa(7.73±0.85mMおよび7.93±0.79mM)がNW(9.53±0.97mM)に比べて有意(p<0.05)に低く抑えられており,中等度のWUの効果が60分程度持続される可能性が示された.一方,La(7mM程度),HR(170beats・min⁻¹程度),RPE(17程度)およびΔTrpreWU(1.1℃程度)を顕著に上昇させる高強度のWU(WH60)実施後では,CS実施後のLaがNWとほぼ同水準(8.73±1.00mM)となり,高強度のWUの危険性が示唆された.WH60では,WU終了後の待ち時間におけるTrの低下がCS開始5分前まで継続的に示され,その結果,待ち時間におけるTrの相対的低下量(-0.87℃)がWM60(-0.53℃)に比して有意(p<0.01)に大きくなっていた.これらのことから,WU終了後に60分程度の長い待ち時間を設定する場合,そのときに起こり得る体温の急激な低下がWUにより得られる効果を相殺するような負の影響を誘発する可能性が示唆された.特に,WU終了後の体温の低下は,WU時の運動強度に比例して大きくなる可能性が高いため,高強度の内容でWUを構成する場合には注意が必要となろう.

「デサントスポーツ科学」第18巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 森谷暢*1, 吉村豊*1, 榎本至*1, 柴田義晴*2
大学・機関名 *1 中央大学, *2 東京学芸大学

キーワード

ウォームアップ待ち時間競泳選手