信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 着衣救助はいかに危険か

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.18 Vol.18

 本研究では,着衣による救助が生体に及ぼす影響について調査し,着衣救助の危険性について検討を加えることを目的とした.被検者は,救助員資格を持つ者あるいはそれと同等以上の者6名を対象に,二種の運搬法(クロスチェストキャリー,ヘッドキャリー)を三種の救助条件(救助者:溺者=「水着−水着」「水着−着衣」「着衣−着衣」)によって25m離れた溺者に対して救助試技を行わせた.救助試技の際の心拍数血中乳酸濃度,RPE,所要時間を調査し,併せてVTRによって運搬中の映像を撮影した.
 心拍数,血中乳酸濃度,REPおよび所要時間ともに,両者水着の場合と比較して溺者が着衣の場合にわずかな上昇あるいは延長が見られたが,救助者が着衣の場合には有意(p<0.05)な上昇あるいは延長が認められた.
 運搬中の映像は,救助者が水着の場合では溺者が水着あるいは着衣のどちらであっても救助者の動作や溺者の姿勢位置はさほど変化は見られなかったが,救助者が着衣の場合には救助者,溺者ともに,姿勢や位置が大きく変化(沈下)した.本研究では,着衣救助がいかに救助条件を悪化させ,身体負担を増加させるかが明らかになった.着衣救助の危険性を周知するとともに,泳いで救助せざるを得ないような時には,できるだけ多くの衣服を脱いで向かうことが重要である.

「デサントスポーツ科学」第18巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 柴田義晴*1, 原英喜*2, 北川幸夫*3
大学・機関名 *1 東京学芸大学, *2 國學院大学, *3 日本女子体育大学

キーワード

着衣救助救助員溺者