信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF トレーニングによる筋肉づくりに有利なタンパク質に関する運動栄養学的研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.18 Vol.18

 分岐鎖アミノ酸は,筋タンパクに豊富に含まれると同時に,運動時のエネルギー源としても利用されることが明らかにされつつある.本研究では9分岐鎖アミノ酸代謝の調節機構に関する基礎的な研究と食餌タンパク質が体内の分岐鎖アミノ酸代謝に及ぼす影響を検討した.分岐鎖アミノ酸代謝は,分岐鎖α一ケト酸脱水素酵素(BCKDH)により律速されるが,ラット肝臓のBCKDH活性は,雄よりも雌で著しく低いので,分岐鎖アミノ酸代謝は雌雄間で大きく異なることが明らかとなった.
 BCKDHを不活性化するBCKDHキナーゼの活性は雄よりも雌で有意に高いので,分岐鎖アミノ酸代謝の雌雄差はBCKDHキナーゼの発現量の違いにより一部説明できると考えられる.低タンパク食を摂取したラット肝臓のBCKDH活性は著しく低下するが,運動負荷によりその活性は有意に上昇する.この結果は,タンパク不足の条件でも運動は分岐鎖アミノ酸分解を促進することを意味しており,運動時の分岐鎖アミノ酸利用率が高いことを示唆している.食餌タンパク質中の分岐鎖アミノ酸含量は異なるので,タンパク質の種類は分岐鎖アミノ酸代謝に影響する可能性がある.
 トレーニングラットに30%カゼインタンパク食もしくは30%大豆タンパク食を与えて飼育すると,後者に比べて前者を摂取した雄ラットの血清中分岐鎖アミノ酸濃度は高値を示す傾向が認められた。カゼインは大豆タンパクよりも分岐鎖アミノ酸含量が高い.したがって,分岐鎖アミノ酸を多く含むタンパク質はトレーニングによる筋タンパクの合成に有利に作用する可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第18巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 下村吉治, 村上太郎
大学・機関名 名古屋工業大学

キーワード

分岐鎖アミノ酸筋タンパク運動エネルギー源食餌タンパク質