信州大学 繊維学部技術データベース

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PDF 暑熱環境下の運動時身体機能および快適感に及ぼす局部冷却の効果

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.18 Vol.18

 本研究は,夏期,暑熱環境下における運動に伴う熱障害発生予防および運動パフォーマンス低下の防止に有効な実用的局部冷却法を探ることを目的として,実験室内実験および屋外実験を行った.
 室内実験では,環境温度35℃および30℃に設定した人工気候室において,60%HRmaxの間欠的自転車エルゴメータ運動を行わせ,背部9℃冷却,頚・前額部9℃冷却および頚・前額部19℃冷却の3条件を比較した.両環境条件において,心理的側面(温度感覚,快適感覚)は非冷却時よりも負担度は軽減される効果を示した.しかし,心拍数,体温(直腸温,鼓膜温)などの生理機能は頚・前額部9℃冷却時のみ効果があることが示された.
 屋外実験では,初夏(気温34℃,WBGT37.0℃)のテニスダブルスゲーム(1時間)時に,屋内実験において効果の示された頚・前額部9℃冷却を行った冷却群と非冷却群の比較を行った.体温(舌下温)には差は見られなかったが,温度感覚および快適感覚は冷却効果が示された.
 以上の結果より,暑熱環境下における運動時の冷却には頚・頭部が有効であり,冷却温度は少なくとも10℃以下の低温が必要であることが示唆された.今回冷却に用いた市販されているような冷却バンドを9℃にするには,冷水やアイスパックなどを用いないとできないため,非実用的である.今後,より簡易に低温を維持でき,かつ容易に装着できるような冷却装置の開発が期待される.

「デサントスポーツ科学」第18巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 田中英登*1, 相原康二*2
大学・機関名 *1 横浜国立大学, *2 東京都立大学

キーワード

暑熱環境下熱障害発生運動パフォーマンス局部冷却法心理的側面生理機能