信州大学 繊維学部技術データベース

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PDF プール飛び込み事故予防のための安全対策

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.18 Vol.18

 プール飛び込み事故の発生要因を明らかにして,そのメカニズムの理解を深め,具体的な安全対策を検討することを目的として,
 (1)プール飛び込み事故訴訟の22事件26判決内容から,プール構造と指導・管理の責任について検討し,
 (2)水泳愛好の児童・生徒・学生198名を対象に,プール飛び込み練習中の失敗体験の実態を調査し,
 (3)児童18名を対象に,水深1.5mのプールに水深0.8mの疑似水底を設置し,両方の水深での飛び込み動作をビデオ撮影して,比較分析した.
 その結果,
 (1)プール構造の安全性は,普通の飛び込み動作を正常な形で行うまたは通常生じ得るミスの範囲内で行うことに対して保障されているべきものであること.
 (2)飛び込みによりプールの水底に衝突して事故になる危険性について,泳者のみならず,水泳指導・プール管理者の認識が不足していること.
 (3)水泳愛好者の中で,プールの底に頭をぶつけた経験のある者が16.16%もみられ,飛び込み動作は,わずかな要因で常に失敗を引き起こす危険性を含んでいること.(4)飛び込み動作の入水動作の姿勢が,入水後の到達水深を調節する主体であり,また入水時の上肢の位置・方向および体幹の反りを伴う下肢の打ち下ろし動作が,水中での方向修正に重要な機能を持っこと.が明らかとなった,プール飛び込み事故は,(1)個体(飛び込む者)の要因,(2)方法(飛び込む方法)の要因,(3)環境(プール構造)の要因,(4)指導・管理の要因が,一瞬のうちに複合的に作用して発生すると考えられる.
 本事故の特性と発生要因を理解し,その危険性を社会に周知させるとともに,より確実な飛び込み指導の確立とプール構造の安全性の確保に努力することが必要と考えられた.

「デサントスポーツ科学」第18巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 武藤芳照*1, 太田(福島)美穂*1, 上岡洋晴*1, 野村照夫*2, 望月浩一郎*3
大学・機関名 *1 東京大学, *2 京都工芸繊維大学, *3 東京本郷合同法律事務所

キーワード

飛び込み事故プール