動静脈吻合の体力医学的意義
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.18 Vol.18】
本研究は,人の皮膚血管のうち,四肢末梢部や顔面等にのみ存在する動静脈吻合血管(AVA:Arteriovenous anastomoses)に着目し,温熱生理学的観点からその体力医学的意義について検討することを目的とした.下肢運動中に一側の手首を機械的に圧迫して,前腕の皮膚温,発汗量への影響を観察する実験を行った.この結果,上肢末端のAVA血管拡張は手指への血流量を増加させるばかりでなく,手から還流する腕部の表在性皮静脈血流量を増加させ,さらに前腕発汗量をも促進するという結果が得られた.手に存在するAVA血管の拡張は,上肢全体からの熱放散増加に貢献することが判明した.下肢でも同様な反応が観察された.さらに,両手首の加圧によるAVA血流璋断実験では,運動中,代償性に皮膚血流量と発汗量の促進が生ずるにもかかわらず,食道温はAVA血流遮断時の方が非遮断時(対照)より高かった.さらに,この代償性の皮膚血管拡張により総末梢抵抗が減少したため,平均血圧の低下が観察された.これらの結果から,四肢末端のAVA血流の増加は上肢および下肢全体から,血圧を低下させることなく,温熱生理学的に少ない負荷で効率よく熱を放散できる機序であることが判明した.
AVA血管の存在する皮膚への局所的な寒冷,または暑熱負荷では,AVA血管は毛細血管と異なる反応を示した.極端な寒冷刺激に対して,手指では寒冷血管拡張反応(CIVD:Cold-induced vasodilation)が起こり,レーザードップラー血流計による計測でもAVA血管の拡張であることが示され,摂食量に比例して充進し,摂食時刻によっても影響されることが観察された.また,体温より高い温度の暑熱刺激に対して,手指のAVA血管では暑熱血管収縮反応(HIVC:Heat induced vasoconstriction)が生じ,外部から体内への熱流入を阻止する生理的な反応であることが示唆された.以上の結果から,AVA血管は種々の寒暑刺激から生体を防衛するという,体力医学的に重要な血管であると結論される.
「デサントスポーツ科学」第18巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
AVA血管の存在する皮膚への局所的な寒冷,または暑熱負荷では,AVA血管は毛細血管と異なる反応を示した.極端な寒冷刺激に対して,手指では寒冷血管拡張反応(CIVD:Cold-induced vasodilation)が起こり,レーザードップラー血流計による計測でもAVA血管の拡張であることが示され,摂食量に比例して充進し,摂食時刻によっても影響されることが観察された.また,体温より高い温度の暑熱刺激に対して,手指のAVA血管では暑熱血管収縮反応(HIVC:Heat induced vasoconstriction)が生じ,外部から体内への熱流入を阻止する生理的な反応であることが示唆された.以上の結果から,AVA血管は種々の寒暑刺激から生体を防衛するという,体力医学的に重要な血管であると結論される.
「デサントスポーツ科学」第18巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 永坂鉄夫*1, 平田耕造*2, 平井敦夫*3, 平下政美*4 |
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大学・機関名 | *1 金沢大学, *2 神戸女子大学, *3 金沢学院大学, *4 金沢経済大学 |
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