信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

綿布の快適性に関わる熱・水分特性の抽出―スキンモデルを用いたシミュレーション実験―

【大分類:3. テキスタイル 中分類:3.5 感性工学 小分類:3.5.2 感性計測評価

本研究は文化女子大学の田村らが開発した着衣シミュレーション装置スキンモデルを用い,衣服内気候と布諸元及び物性との相関関係から,快適な衣服設計への指標となる特性を抽出することを目的とした。綿100%の織物14 種を対象とし,布の諸元及び物理的特性を計測した。スキンモデルによる測定では布―熱板に介在する空気層の温湿度並びに熱板からの熱流束を測定した。各試料について汗を模擬した吐水後の温湿度の挙動を観察した。得られた温湿度データより,着心地に関連すると考えられる区間データを抽出し,布の緒言及び物理的特性値との相関分析を行った。
結果,水分特性において湿度の傾きや最大値をむれ感,湿潤感の指標とすると,これ関与する布の諸元として重量,厚さ,含気率が,物性項目として透湿性,通気性が抽出された。吐水後の熱特性については,布の熱に関わる特性よりも水分特性の関与が大であることが示唆された。
本研究によるスキンモデルを用いたシミュレーション実験によって,衣服内気候の変化は布特性の複合的に関与によって起きていることが明らかとなった。また,スキンモデルによる指標とJIS 規格による物性値との相関が明らかなり,各物性値による衣服内気候の予測が可能であることが示された。また,快適な着心地に必要な物性要因が明らかとなり,重要となる評価項目の提示が可能となった。

【主要参考文献】
(1) 田村照子:「基礎被衛生学」,pp. 82-83 (2001)
(2) 諸岡晴美,丹羽雅子:「被服材料の水分移動特性と着用感-1-着用感に関係する生理的因子および衣服の物理的性質」,家政学雑誌,Vol. 30,No. 4 pp. 320-327 (1979)
(3) 諸岡晴美,丹羽雅子:「被服材料の水分移動特性と着用感-2-着用感に影響を及ぼす水分移動特性」,家政学雑誌,Vol. 30,No. 4pp. 328-335 (1979)
(4) 内藤 道子,中島利誠,松川哲哉:「布地の透湿性に関する研究-5-ポリエステル布の通気性と透湿性」,家政学雑誌,Vol. 27,No. 6 pp. 441-445 (1976)


アンケート調査(2014年)/信州大学繊維学部Fii
研究者名 山田巧
大学・機関名 東京都立産業技術研究センター 繊維・化学グループ

キーワード

衣料(衣服 衣類)快適性衣服内気候(衣服内環境)スキンモデル非定常状態布の熱・水分移動特性