信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 最大皮膚血管コンダクタンスの発育・老化特性

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.19 Vol.19

 本研究は,皮膚血管それ自体の変性が先行研究で報告した発育・老化に伴う皮膚血管拡張反応の身体部位特性に関与するのか否か明らかにするために,計画された.すなわち,8名の思春期前男児(8-12歳),9名の若年成人男性(20-25歳),9名の高齢者男性(65-77歳)に対し,局所加温器で身体5部位(前額・胸・背・前腕・大腿)の皮膚面(各20cm²)を41-42℃に40分間保持させ,その間の皮膚温,舌下温,血圧,皮膚血流量(LDF)を測定した.舌下温は,子どもが他の群より有意に高かったものの,40分間の加温時においていずれの群でも経時的に変化しなかった.LDFは,部位・群に関わらず,加温開始後20-25分間漸増し,その後ほぼ定常状態を保った.そのため,35-40分目のLDFを最大値と定義し,この値を平均血圧で除して最大皮膚血管コンダクタンス(CVCmax)を求めた.その結果,CVCmaxは,若年成人に比し,子どもでは前額・背・大腿が有意に大きく,高齢者では前腕・大腿が有意に低かった.しかし,胸では有意な年齢群差は認められなかった.これらの結果は,発育・老化に伴う皮膚血管それ自体の変化には,部位差が存在する可能性を示唆するとともに,皮膚血管それ自体の変化が,先行研究で報告した高齢者の低い皮膚血流量(大腿・躯幹部)や思春期前児童における高い躯幹部皮膚血流量に部分的に関与することを示唆する.また,推定最大酸素摂取量とCVCmaxの関連性において,児童が前額で,高齢者が胸でそれぞれ有意な正の相関傾向を示したことから,運動習慣の確立が皮膚血管それ自体の発育促進および老化遅延に有効な手段になり得る可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第19巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 井上芳光
大学・機関名 大阪国際女子大学

キーワード

皮膚血管老化最大皮膚血管コンダクタンス(CVCmax)最大酸素摂取量