ペプチド食摂取が激運動後の骨格筋および肝臓でのタンパク質代謝に及ぼす影響
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.19 Vol.19】
長時間の激しい運動時には骨格筋タンパク質の異化が亢進し,エネルギー源として利用される割合も増加する.一方,激運動時には消化器官への血流が低下し消化吸収能力も低下する.このような条件下での食事性タンパク質源の補給には,タンパク質およびアミノ酸よりも消化吸収の点で優れているタンパク質の部分分解物であるペプチドが有効であると考えられた.そこで本研究では,ペプチド摂取が長時間の持久的運動後の骨格筋および肝臓でのタンパク質合成と分解に及ぼす影響を調べることを目的とした.
高炭水化物食で飼育したマウスにトレッドミルでの3時間のランニングを負荷し,運動直後に化学形態の異なる3種類のタンパク質源(タンパク質,ペプチド,アミノ酸)を経口投与し,運動後の回復期における骨格筋および肝臓でのタンパク質の合成と分解を調べた.タンパク質の合成は静注した放射性標識[3H]フェニルアラニンの組織への取り込み率と,腹腔内投与した放射性標識[¹⁴C]ロイシンの血漿アルブミンへの取り込み率より調べた.また,タンパク質の分解は血漿3−メチルヒスチジン値(3−MeHis)より検討した.
その結果,3種類のタンパク質源の投与はタンパク質源の無投与に比して有意に高い肝臓でのタンパク質合成と,骨格筋でのタンパク質分解の低下をもたらしたが,投与したタンパク質源の化学形態の違いによる差は認められなかった.しかし,運動直後から運動3時間後までのタンパク質合成を肝臓でのアルブミン合成に限定して調べると,ペプチド投与はタンパク質およびアミノ酸の投与に比して有意に高い値を示した.
これらの結果より,運動直後のタンパク質源の補給は運動後の回復期におけるタンパク質代謝の回復に対して効果的であり,この時のタンパク質源としては消化吸収性の優れたペプチドとして摂取することがより効果的であることが示唆された.
「デサントスポーツ科学」第19巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
高炭水化物食で飼育したマウスにトレッドミルでの3時間のランニングを負荷し,運動直後に化学形態の異なる3種類のタンパク質源(タンパク質,ペプチド,アミノ酸)を経口投与し,運動後の回復期における骨格筋および肝臓でのタンパク質の合成と分解を調べた.タンパク質の合成は静注した放射性標識[3H]フェニルアラニンの組織への取り込み率と,腹腔内投与した放射性標識[¹⁴C]ロイシンの血漿アルブミンへの取り込み率より調べた.また,タンパク質の分解は血漿3−メチルヒスチジン値(3−MeHis)より検討した.
その結果,3種類のタンパク質源の投与はタンパク質源の無投与に比して有意に高い肝臓でのタンパク質合成と,骨格筋でのタンパク質分解の低下をもたらしたが,投与したタンパク質源の化学形態の違いによる差は認められなかった.しかし,運動直後から運動3時間後までのタンパク質合成を肝臓でのアルブミン合成に限定して調べると,ペプチド投与はタンパク質およびアミノ酸の投与に比して有意に高い値を示した.
これらの結果より,運動直後のタンパク質源の補給は運動後の回復期におけるタンパク質代謝の回復に対して効果的であり,この時のタンパク質源としては消化吸収性の優れたペプチドとして摂取することがより効果的であることが示唆された.
「デサントスポーツ科学」第19巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 三上俊夫*1,伊藤朗*2,吉野芳夫*3 |
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大学・機関名 | *1 日本医科大学,*2 筑波大学,*3 昭和女子大学大学院 |
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