運動トレーニングおよび暑熱馴化時の体温調節機能の亢進における浸透圧調節系の役割
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.19 Vol.19】
暑熱馴化時の浸透圧調節系の適応を明らかにするために,浸透圧刺激性の体温調節反応の抑制と汗ナトリウム濃度との関係を求めた.浸透圧刺激性の体温調節反応抑制を定量化するために,高張性食塩水輸液後と等張性食塩水輸液後に下腿温浴を被験者に行わせ,発汗および皮膚血管拡張の深部体温閾値を求めた.さらに,バゾプレッシン分泌に対する浸透圧感受性と汗ナトリウム濃度の関係も求めた.
高張性食塩水輸液により温熱負荷時の体温上昇は有意に増加した.この体温の上昇は,主に発汗および皮膚血管拡張の深部体温閾値の上昇によるものであった.また,浸透圧上昇による発汗および皮膚血管拡張の深部体温閾値上昇は,汗ナトリウム濃度の高い被験者程大きかった.また,バゾプレッシン分泌の浸透圧感受性は汗ナトリウム濃度が高い被験者程低下した.
以上の結果より,暑熱馴化して汗ナトリウム濃度が低下したヒトでは浸透圧上昇の体温調節反応に対する抑制効果が減弱して,とくに長時間の運動や暑熱暴露時に,体温調節機能を高いレベルで維持することが可能となり,さらにバゾプレッシン分泌の亢進によって体液保持能力も高まっていることが示唆された.
「デサントスポーツ科学」第19巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
高張性食塩水輸液により温熱負荷時の体温上昇は有意に増加した.この体温の上昇は,主に発汗および皮膚血管拡張の深部体温閾値の上昇によるものであった.また,浸透圧上昇による発汗および皮膚血管拡張の深部体温閾値上昇は,汗ナトリウム濃度の高い被験者程大きかった.また,バゾプレッシン分泌の浸透圧感受性は汗ナトリウム濃度が高い被験者程低下した.
以上の結果より,暑熱馴化して汗ナトリウム濃度が低下したヒトでは浸透圧上昇の体温調節反応に対する抑制効果が減弱して,とくに長時間の運動や暑熱暴露時に,体温調節機能を高いレベルで維持することが可能となり,さらにバゾプレッシン分泌の亢進によって体液保持能力も高まっていることが示唆された.
「デサントスポーツ科学」第19巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 鷹股亮*1,芳田哲也*2 |
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大学・機関名 | *1 京都府立医科大学,*2 京都工芸繊維大学 |
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