信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 長時間のリュックサック肩紐圧迫が血流反応と圧迫感に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.20 Vol.20

 リュックサックの肩紐6cm幅と2cm幅を用いて,各々9kgの負荷60分間(長時間)での生理心理的反応を若年女性8名について測定し,肩紐幅の違いから検討した.右頸側部で測定した肩紐圧は,6cm幅で30±3.5mmHg,2cm幅で70±5.4mmHgであった.手指の皮膚血流量は,60分目には6cm幅より2cm幅で有意に低値を示した.心拍数は,6cm幅では60分間ほぼ一定の増加度を示したが,2cm幅では40分目以降さらに大きな増加がみられ,皮膚血流量の低下と連動していた.この結果から,長時間のリュックサック負荷2cm幅では肩紐圧が大きいため,血圧調節反射が生じたものと考えられた.前腕部組織内の酸素飽和度,酸素化ヘモグロビン(Hb)量は,2cm幅では6cm幅より大きく減少したが,脱酸素化Hb量は増加した.この結果,2cm幅の肩紐では6cm幅より筋血流量の減少度が大きくなることが示唆された.圧迫感と背負い心地は,終始2cm幅でよりきつい,より心地悪いと申告された.
 さらに,リュックサック負荷60分後に6種類の手指パフォーマンステストを行った.指トルク運動,最大指トルクのテストでは,非圧迫時と比べ2cm幅では有意な低下が認められた.指エルゴメーター運動の継続時間は,2cm幅で非圧迫時および6cm幅より有意に短縮した.これは,圧迫による筋血流量の低下度が反映したものと考えられる.
 これらの結果より,異なる肩紐幅でのリュックサック負荷において,短時間では生理的負担度に差は認められなかったが,長時間負荷することで,両肩紐間の差は有意に大きくなることが示された.

「デサントスポーツ科学」第20巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 吉田美奈子*1,柴田祥江*2,田中希弥*1,田中香利*1,平田耕造*1
大学・機関名 *1 神戸女子大学,*2 兵庫県立生活科学研究所

キーワード

リュックサック肩紐圧皮膚血流量心拍数酸素飽和度酸素化ヘモグロビン