信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 高齢者における運動時の発汗および皮膚血流量反応

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.20 Vol.20

 本研究では,運動強度の増大に伴う発汗・皮膚血流反応の身体部位差の変化に老化の影響がみられるか否か明らかにするために,9名の若年成人男性(20-25歳)と6名の高齢者男性(65-77歳)に対し,最大酸素摂取量(VO₂max)の35,50,65%に相当する自転車運動を日を変えて30分間負荷した.運動終了時の心拍数(HR)と直腸温(Tre)は,両群とも運動強度の増大に比例して増加した.50%と65%VO₂max時のTreおよびすべての運動強度時における安静値に対するHRの増加率には,いずれも有意な年齢群差は認められなかった.前額・胸・背・前腕・大腿の局所発汗量(msw)は,両群のいずれの部位でも運動強度の増大に伴い有意に増加した.5部位のmswの合計値に対する各部位のmswの比率は,両群とも運動強度の増大に伴って前額が有意に大きくなり,大腿が有意に小さくなった.この比率は,前額では年齢差がみられなかったが,大腿ではいずれの運動強度時も高齢者が有意に小さかった.この年齢差は,高齢者の大腿で単一汗腺あたりの汗出力(SGO)が増加しなかったことに起因した.mswは,年齢群差のみられなかった部位も存在したが,いずれの運動強度の場合も高齢者が有意に低かった.mswに観察された年齢群差が,とくに大腿で顕著だった.高齢者でみられた低いmswは,活動汗腺数の低下ではなく,SGOの低下に起因した.安静時に対する変化率で示された運動時の皮膚血流量(%LDF)は,前額・胸・前腕でも35%VO₂max運動から50%VO₂max運動で有意に増加したが,50%と65%VO₂max間には有意な変化はみられなかった.%LDFは,若年成人では35%と50%VO₂maxで前腕が前額と胸より,65%VO₂maxで前腕と胸が前額より,有意に大きかったが,高齢者ではいずれの強度時でも有意な部位差を認めなかった.%LDFは,いずれの部位でも高齢者が若年成人より有意に低かった.これらの結果は,運動強度の増大に伴う発汗・皮膚血管拡張の変化には部位差が存在し,老化がこの部位差に影響することを示唆する.

「デサントスポーツ科学」第20巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 井上芳光,上田博之
大学・機関名 大阪国際女子大学,大阪信愛女学院短大

キーワード

運動強度発汗皮膚血流反応最大酸素摂取量