信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 肥満関連遺伝子と超音波法による身体組成および運動時呼気ガス応答との関係

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.21 Vol.21

 β₃アドレナリンレセプター(β₃AR)の遺伝子変異は,腹部肥満,すなわち内臓脂肪型肥満との関連が指摘されている.本研究は,β₃ARの遺伝子変異と超音波法による身体組成および呼気ガス応答との関連について検討するものである.被検者は,変異ヘテロの者が5名(AT群),正常ホモの者が6名(TT群)で,それぞれ超音波法による形態計測およびトレッドミルによる最大運動負荷テストを実施した.β₃ARの遺伝子検査は,PCRおよびピンポイントシーケンス法により検出した.形態計測の測定項目は,BMI,ウエスト囲で,超音波Bモード法により内臓脂肪型肥満の目安とされる腹膜前脂肪厚(PFTT)を測定した.運動負荷プロトコールは,換気閾値(VT)を算出しやすいように考案したトレッドミルによる歩行のランプ負荷法を用い,疲労困憊に至るまで実施した.運動中は,酸素摂取量(VO₂)を10秒ごとにモニターし,安静時,VTおよびピーク時を解析した.
 PFTTと体重当たりの最大酸素摂取量(VO₂max/kg)およびVT時のVO₂(VO₂@VT/kg)との間には,AT群で有意な負の相関関係が認められたが(p<0.05),TT群では有意な相関関係は認められなかった.しかし,PFTTと酸素摂取量の絶対値との関係をみると,AT群においてもVO₂max(l/min)との間には有意な相関関係は認められなかったが,VO₂@VT(l/min)との間には5%水準で有意な負の相関関係が認められた.さらにAT群では,PFTTと安静時VO₂との間に有意な相関関係は認められず,VT時のエネルギー消費量との間には5%水準で有意な負の相関関係が認められた.
 以上のことから,β₃ARの遺伝子変異を有する者の内臓脂肪の蓄積は,有酸素能力との関係が大きく,安静時エネルギー消費量よりも運動時の脂肪燃焼能力との関連が高いVTとの関係が大きいという結果を示した.したがって,β₃アドレナリンレセプターの遺伝子変異を有する者においても,高いVTを確保できるような運動習慣を維持することで,必ずしも肥満には結びつかない可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第21巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 真田樹義*1,朽木勤*1,神戸義彦*1,佐藤真治*2,江橋博*3,羽鳥裕*4,島津光伸*5
大学・機関名 *1 スパ白金,*2 埼玉医科大学,*3 明治生命厚生事業団,*4 神奈川県予防医学協会,*5 三菱化学ビーシーエル

キーワード

腹部肥満内臓脂肪型肥満腹膜前脂肪厚最大酸素摂取量