信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF ウォーキングによるトレーニングが中高年者の抗酸化能力に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.21 Vol.21

 本研究は,ウォーキングが抗酸化能力の指標である血中の還元型グルタチオン(reducedglutathione : GSH)濃度およびグルタチオンリダクターゼ(glutathione reductase: GR)活性に影響を及ぼすか否かを明らかにしようとした.また,ウォーキングが心臓血管系疾患の指標となる血中の総コレステロール,高密度リポ蛋白(highdensity lipoprotein: HDL)コレステロール,中性脂肪に及ぼす影響についても検討した.被験者は,1年以上それぞれの強度,持続時間(週3-6日,30-90分)でウォーキングを行っている健康な中高年の女性,17名とした.安静時の採血を行う前3週間にわたり,被験者の毎日の歩数を万歩計を用いて計測した.被験者の1日あたりの平均歩数(平均値±標準偏差)は11019.1±3658.9(歩/日)だった.血漿GSH濃度,GR活性は,1日あたりの平均歩数が多い者ほど増大する傾向が見られ,GRについては有意(r=0.610, p<0.01)な相関が認められた.血漿リポ蛋白については,1日あたりの平均歩数と有意な相関は認められなかった.さらに1日あたりの平均歩数が12000歩未満(L)のグループと12000歩以上(H)のグループに分け,血漿GSH,GR,過酸化脂質,総コレステロール,HDLコレステロールおよび中性脂肪についてグループ間で比較した.血漿GR活性についてはH群がL群に比べ高くなる傾向が見られたが,いずれの項目についてもグループ間で有意な差は認められなかった.
 以上の結果,ウォーキングによる日常の身体活動レベルの増加は,グルタチオン系,特にGR活性を上昇させ,中高年者の抗酸化能力を向上させることが明らかになった.一方,血漿リポ蛋白濃度については,日常の身体活動レベルによる影響は認められなかった.

「デサントスポーツ科学」第21巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 伊藤宏*1,下田次雄*2,山良比古*1
大学・機関名 *1 名古屋工業大学,*2 中部大学

キーワード

ウォーキング抗酸化能力心臓血管系疾患中高年の女性