信州大学 繊維学部技術データベース

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PDF 水中環境下での脚筋力トレーニングは筋血流制限下のトレーニングと言えるのか

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.22 Vol.22

 陸上立位,陸上座位,陸上臥位,浅水立位(A:77cm),深水立位(B:117cm)の各姿勢・環境において,安静時及び膝関節伸展運動時の内側広筋部の組織内酸素飽和度の測定とその時の筋電図測定を行った.その結果,陸上立位と比較して他の姿勢や環境は,安静時の組織ヘモグロビン量(HbT)において低値を示した.その原因は,組織脱酸素化ヘモグロビン量(HbD)の減少であった.HbDは静脈の還流量を表していることから,椅座位や仰向け姿勢及び水没によって静脈の還流が多くなり,内側広筋部の静脈血流入量が減少したものと考えられた.
 そして,組織酸素飽和度(StO₂)と心拍数(HR)の値から陸上臥位と深水立位,陸上座位と浅水立位との間に血流動態が類似していることが確認された.次に,運動時のHbTは,陸上時と比べ深水立位時に有意に低値を示し,安静時と同様にHbDの有意な低下が観察された.しかし,StO₂には有意な差が認められなかった.これは,運動時のHbTの減少が安静時と比べると少なかったため,StO₂には影響を及ぼさない程度の静脈還流の増加量であったことが窺えた.また,運動により,動脈血流入量の増加による組織酸素化ヘモグロビン量(HbO₂)の増加傾向および静脈還流量の増加によるHbDの減少傾向が認められた.そして,運動時の各環境における動脈血の酸素飽和度(SpO₂),HbO₂の有意な差はなかった.
 以上の結果から,本研究における水中環境下での運動は,筋血量制限下の運動ではなく,浅水位A:77cm(大転子レベル)では陸上座位,深水位B:117cm(剣状突起レベル)では陸上臥位の血流動態に類似した環境での運動であることがわかった.

「デサントスポーツ科学」第22巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 須藤明治*1,角田直也*1,田口信教*2,藤原寛康*3,矢田秀昭*4
大学・機関名 *1 国士舘大学,*2 鹿屋体育大学,*3 東京大学大学院,*4 和光大学

キーワード

膝関節伸展運動酸素飽和度脱酸素化ヘモグロビン量組織酸素飽和度水中環境下での運動