寒冷環境下での運動による末梢皮膚血液変化と『冷え感』について
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.22 Vol.22】
本研究では,冬のような寒冷環境下(気温15±1℃・湿度60±5%R.H.・風速0.2m/sec以下)で軽い運動を行ったとき,運動初期に起こる末梢の皮膚温及び皮膚血流の変化と温冷感覚について検討した.被験者は日常あまり運動しない健康な女子学生7名である.運動はエルゴメーターによる負荷とし,心拍数が100拍/分(bpm),110bpm,120bpmの異なる3種の強度を設定した.実験は,運動前安静5分,その後30分間運動を行い,10分間の安静回復をとる45分間行った.鼓膜温,平均皮膚温,指先皮膚温,指先皮膚血流を測定すると同時に,全身と手の温冷感覚を実験中5分間隔で測定した.鼓膜温は運動によってわずかに上昇したが,平均皮膚温は運動することで減少した.この鼓膜温の上昇は全身温冷感に影響した.運動開始から約8分間に指先皮膚温には約4℃の低下が観察された.一方,レーザードップラー血流計で測定した指先皮膚血流は,運動開始と同時に0.5〜1.0V低下した.これら皮膚温と皮膚血流の減少は運動を開始することによって引き起こされる非温熱的因子によるものと思われる.そして,特に軽い100bpmの運動は手の『冷え感』を大きく増大させた.また,手の皮膚温及び,皮膚血流は手の温冷感覚と高い相関を示した(相関係数0.767,0.766).これらの結果から,寒冷環境では運動開始による末梢皮膚血流の減少が『冷え感』を増大させることが示唆された.
「デサントスポーツ科学」第22巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
「デサントスポーツ科学」第22巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 伊佐治せつ子*1,三宅宏司*1,平田耕造:2 |
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大学・機関名 | 武庫川女子大学,神戸女子大学 |
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