信州大学 繊維学部技術データベース

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PDF 幼少期の筋力トレーニングが成熟後のトレーニング効果に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.22 Vol.22

 幼少期の筋力トレーニングが成熟後のトレーニング効果にどのような影響をおよぼすのであろうか?骨格筋の成長は個々の筋細胞の肥大と増殖によるものである.その筋細胞の増殖は成長ホルモン,テストステロンなどの内分泌系ホルモンの作用によるものと,線維芽細胞成長因子,インスリン様成長因子など自己分泌や傍分泌系の成長因子の働きによっておこるものがある1), 2), 3).筋力トレーニングによる筋の成長にはこれら,内分泌系物質や成長因子に加え,機械的伸展刺激もその役割を担っている.In vitroでの機械的伸展刺激による実験研究から,筋そのものの活動が筋の成長を促すことが判明している.したがって筋活動によるトレーニング効果は幼少期から老年期まで期待される.
 筋力トレーニングによる筋肥大も個々の筋細胞の肥大と増殖によるものである.この筋細胞の肥大と増殖はサテライト細胞の活性化に依存する.筋活動によりサテライト細胞が活性化され,増殖し,その後,サテライト細胞は互いに融合して新たな筋線維を形成する4).さらに,既存の筋線維は肥大し,その筋線維には多くの核が含まれている.最終の分化産物である筋線維は細胞分裂や核分裂をしない.したがって肥大筋線維に含まれる核の由来はサテライト細胞であることが示唆される.このような視点で考えれば,サテライト細胞は,運動による筋肥大に欠くことのできない存在である.
 幼少期の筋力トレーニングは,発育にともなうサテライト細胞の活性化に加え,さらなる,サテライト細胞の分裂を招くことが予想される.このようにサテライト細胞は,骨格筋の補償細胞として存在するものの,その分裂能には限界がある.したがって,サテライト細胞の分裂を駆使するような状態に何度もであった場合,その適応能力は徐々に失うものと考えられる.
 そこで本実験では幼少期のトレーニングが成熟後のトレーニングに及ぼす影響について検討した.

「デサントスポーツ科学」第22巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 山田茂
大学・機関名 東京大学大学院

キーワード

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