信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 被服圧が有酸素運動時の生体反応に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.22 Vol.22

 市販の運動用タイツによる呼吸および体温調節応答への圧迫の効果を検討するために,異なる2種類の被服圧のタイツまたはジャージを着用した7名の若年女性が,20分間の中強度および6分間の高強度の自転車運動実験に参加した.実験中,分時換気量(VE),酸素消費量(VO₂),心拍数(HR),平均血圧(MBP),直腸温(Tre),皮膚温(Tsk),および発汗量(SR)を連続的に測定した.しかし,これらのパラメータにおいて被服圧による差は認められなかった.さらに,生体反応が15〜60mmHg程度の大腿部へのカフ圧によって影響されるか否かの検討を試みた.大腿部にカフを巻いた7名の若年女性が,カフ圧の有無両条件において30分間の中強度の自転車運動を実施した.カフ圧は運動開始10分後より,15,30,45,および60mmHgとステップ状に5分おきに上昇させた.運動前後のTreの上昇度にカフ圧による有意差はみられなかったが,VE,VO₂,およびHRは,45および60mmHgの加圧時に明らかに高い値を示した.また,運動終了直後のMBPも圧迫運動時の方が高い値を示した.これらの結果より,45mmHg程度のカフ圧から,運動筋における代謝物質の蓄積による化学受容器反射が引き起こされていることが示唆された.これより,活動筋への圧迫を伴う運動トレーニングは,カフ圧を負荷しない場合よりも,より効果的に身体能力を改善するかもしれないことが推察された.新しい素材や繊維の開発,縫製の改善などが必要ではあるが,エアロビクスパフォーマンスの向上を目的としたスポーツウェアの開発が可能であると考えられる.

「デサントスポーツ科学」第22巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 芝﨑学,佐藤留美子,登倉尋實
大学・機関名 奈良女子大学

キーワード

呼吸体温調節応答被服圧カフ圧化学受容器反射