信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 力ベクトル制御課題における二関節筋活動度決定機序の解明

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.23 Vol.23

 中枢神経系が関節トルクをどのような機序で単・二関節両筋群に分配しているのかについて検討した.7名の被験者について,足部に付けたワイヤを等尺性に引っ張る課題を用い,膝・股関節に様々なトルク(それぞれ Tk,Th:伸展を正,屈曲を負とする)を課したときの,下肢筋の活動レベルの変化を表面筋電図により評価した.その結果,筋の活動レベルは両関節トルクの線形和として一意的に表されることから,各筋は,トルク座標系(Tk, Th)において活動レベルが最も急峻に増加する「至適方位」を持つことが分かった.二関節筋の至適方位(大腿直筋:-37.8度,大腿二頭筋長頭:154.3度等)は,筋の活動によって生じるトルクの方向(固有ベクトルの方向)と一致していた.単関節筋が生成するトルクの方向はトルク座標系の軸に平行であるが,実験で得られた至適方位はそれとは異なる値(大殿筋:38.9 度,内側広筋:16.4度等)を示した.これは,単関節筋の活動レベルが,自ら関与しない関節のトルクを伴うときに最も急峻に立ち上がるという直感に反する現象が生じていることを意味する.われわれはこれら一連の実験結果が,下肢にトルク(Tk,Th)が課されたとき,まず二関節筋にベクトル(Tk, Th)からその固有ベクトルへの正射影に比例した量が分配され,残りの部分が単関節筋によって補償される,という簡単な原理によって説明できることを示した.

「デサントスポーツ科学」第23巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 野崎大地,中澤公孝
大学・機関名 国立身体障害者 リハビリテーションセンター研究所

キーワード

関節トルク股関節筋電図二関節筋単関節筋