信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 身体活動時における尿中一酸化窒素化合物(NOX)の動態とその生理的意義の解明

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.23 Vol.23

 一酸化窒素(NO)は血管拡張などの作用を示す重要な血管作用因子であることが知られている.本研究では,持続的膝伸展運動により最大負荷を与え,それに対する生体反応を評価するために,尿中の一酸化窒素代謝物(NOX)と尿のpHの変動の測定を行った.本試験には18歳および19歳の9名の男子バレーボール選手が参加したが,彼らは30%および80%最大(反復)負荷による膝伸展運動を行い,この運動を疲労困憊になるまで各々,約110秒,約17秒ほど続けた.その後,彼らは150分にわたり,休憩した.尿試料はこれら9名の被験者から運動負荷前に1回,運動負荷後150分の休息期に4回採取された.これらの尿試料はNOX,重炭酸イオン,クレアチニン,pHの測定に用いられた.その結果,30%1RM負荷を受けた被験者の尿の重炭酸イオン,およびpHは運動負荷中止後30分以内では減少したが,その後は著しく増加した.この場合,尿のNOXの変動は誤差の範囲内であった.また,80%1RM負荷を受けた被験者の尿の重炭酸イオン濃度,pHの変動は劇的なものであった.すなわち,尿重炭酸イオンは負荷前の対照値と比べ,負荷終了後150分で7倍に増加し,尿のpHも同様に1.13倍になっていた.しかし尿のNOX濃度は負荷前の対照値の1.19倍まで上昇していたものの誤差の範囲での変動であった.これらの結果から,尿NOX,重炭酸イオンおよびpHの変動は血液中のNOX,重炭酸イオン,pHの状態を反映していることが考えられる.本試験で行ったような尿中のNOX,重炭酸イオン濃度,pHなどの測定は高強度の運動負荷後におこる生体内反応を推測する場合有効な手段となりうることが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第23巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 友田燁夫,森口哲史,小田切優子,村瀬訓生,下光輝一
大学・機関名 東京医科大学

キーワード

血管作用因子膝伸展運動尿一酸化窒素代謝物(NOX)重炭酸イオン