信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 現代社会における若年スポーツ選手の貧困な食生活の是正と練習効果向上のための疲労の軽減を目的とした食事介入の効果判定

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.24 Vol.24

 最近の若年者の不適切な食生活やこれらに起因する身体および精神的不健康が問題視されている.若年スポーツ選手においても,同様に日常の食生活が軽視され,しかしながらパフォーマンスを向上させるための栄養剤やサプリメントに依存する傾向が強い.そこで今回,若年スポーツ選手を対象とし,食生活の改善が,練習トレーニングによる疲労の軽減,あるいは筋肉や骨量の増加に影響を及ぼすかどうか検討した.
 対象者は社会人アメリカンフットボール選手(27±3.4歳)29名.シーズン開始日から合同トレーニング16週の間,食生活改善を目的とし牛乳を毎日500ml,トレーニング直後にさらに500mlの牛乳を摂取し,食事指導も行う食事介入群(20名)と,牛乳摂取および食事指導のどちらも行わない対照群(9名)とに分け比較観察した.観察は2重エネルギーX線吸収法(DXA)法による身体部位別筋肉,脂肪,骨量および骨密度の測定,McNairらのPOMS(Profile of Mood State)評価や日本産業衛生学会の『自覚症状調べ』に基づく自覚疲労度の変動を検討した.
 運動トレーニング開始後16週で食事介入群,対照群とも体重,骨量が増加した.食事介入群では筋量(体幹部)の増加,対照群では体脂肪量(体幹部,脚部)の増加が認められた.また食事介入群ではトレーニング直後の自覚疲労において減少が認められたが,対照群では減少は観察されなかった.
 以上のことから,若年スポーツ選手に対し栄養指導および牛乳の摂取増加を行うことにより,運動トレーニングによる自覚疲労の抑制,筋量や骨量の増加が期待でき,食事改善による運動競技力向上の可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第24巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 広田孝子,今井奈保子,越山香里,楠知子
大学・機関名 辻学園中央研究室

キーワード

サプリメント疲労骨量食生活改善食事指導運動トレーニング