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PDF 運動前の身体加温は運動時の骨格筋損傷を抑制するか否か-熱ショックタンパク質70 (HSP70)の発現からの検討-

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.24 Vol.24

 本研究では事前のHSP70の増加が運動時の骨格筋損傷を抑制するか否かについて検討した.実験1ではマウスに42℃,30分間の熱ストレスを負荷し,24時間後にヒラメ筋と長指伸筋を採取してHSP70を定量した.実験2ではマウスを運動群と熱負荷+運動群の2群に分けて,熱負荷+運動群には運動負荷の24時間前に実験1と同様の熱ストレスを負荷した.その後,各群マウスに60分間の下り坂走を負荷した.運動12,24,48時間後にヒラメ筋,長指伸筋と血漿を採取し,骨格筋損傷の指標である骨格筋β-glucuronidase活性と血漿CK活性を測定した.主要な結果は以下の通りである.熱負荷により直腸温は有意に上昇し,ヒラメ筋と長指伸筋のHSP70量は有意な増加を示した.下り坂走後12時間での血漿CK活性は熱負荷+運動群が運動群に比し有意な低値を示した.運動群でみられた運動48時間後のヒラメ筋のβ-glucuronidase活性の上昇が熱負荷+運動群ではみられなかった.また,長指伸筋のβ-glucuronidase活性は48時間後に両群ともに有意な上昇を示したが,熱負荷+運動群の上昇は運動群に比べ有意な低値を示した.これらの結果より,運動前の熱負荷は運動後の筋損傷を抑制することが明らかとなった.この原因としては熱負荷により骨格筋のHSP70が増加したことが関係したと考えられる.

「デサントスポーツ科学」第24巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 三上俊夫,太田成夫
大学・機関名 日本医科大学

キーワード

骨格筋損傷熱負荷熱ストレス熱ショックタンパク質