信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 中高年齢者の噛みしめ強度の違いによる血圧,脳血流量応答

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.24 Vol.24

 本研究では,自歯を有する19〜75歳の健康な男性14名(中高年齢者7名;ME群,若年者7名;Y群)を対象に,最大咬合力の25%,50%および75%強度噛みしめ時の血圧(SBP,DBP),心拍数(HR),指尖容積脈波波高(WHPTG),総頸動脈血流量(BFVCC)応答を観察し,中高年齢者における噛みしめ時循環動態の特徴を明らかにすることを目的とした.中高年齢者(ME群)では,血圧,心拍数は弱い強度の噛みしめ時から有意に上昇し,噛みしめと同時に交感神経系活動の亢進が惹起された.とくにSBPの上昇とWHPTGの平低は顕著であった.ΔBFVCC(Δ,安静値との差),血流速度(ΔVel.BF),鼓膜温(Tty)は,中等度(50%)強度以上の噛みしめ時に有意な上昇をした.噛みしめ時にはΔHRとVel.BF(r=0.701),およびBFVCC(r=0.616),またDBPとVel.BF(r=0.670)との間に正の有意相関が認められ,循環系には噛みしめによる圧負荷応答の存在が示唆された.これらの結果,中高年齢者は噛みしめによる脳血流量の増加に比較し,血圧の上昇が顕著であることが示唆された.
 従って,噛みしめ(咀嚼)運動は脳血流量を一過性に増加させ,脳の活性化と脳血管の柔軟性を維持する効果が期待される.一方,高齢者や高血圧患者の強い噛みしめには,一層の高血圧が惹起されることも懸念された.日常の咀嚼では,弱〜中等度強度で回数を多く噛むことが薦められる.

「デサントスポーツ科学」第24巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 石山育朗*1,木村真規*2,滝口俊男*3,関哲哉*3,鈴木政登*4
大学・機関名 *1 國學院大学栃木短期大学,*2 共立薬科大学,*3 (株)ロッテ中央研究所,*4 東京慈恵会医科大学

キーワード

中高年齢者最大咬合力血圧指尖容積脈波脳血流量