信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 運動トレーニングが若年女性の熱放散反応に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.24 Vol.24

 本研究では,運動鍛錬者11名(T群)と同非鍛錬者13名(U群)の卵胞中期と黄体中期に30℃・45%RH環境下で下肢温浴(42℃)を60分間負荷し,運動トレーニングが熱放散反応に及ぼす影響を検討した.実験当日の血中女性ホルモンは,T・U群とも卵胞中期から黄体中期に有意に増加したものの,その増加度はT群がU群より有意に小さかった.下肢温浴中における直腸温(Tre)および平均皮膚温は,卵胞中期と黄体中期ともT群がU群より有意に低かった.下肢温浴前・中のTreおよび平均体温(Tb)は,U群では黄体中期に卵胞中期より有意に上昇したものの,T群にはその傾向がみられなかったため,黄体中期でそれらの群差がより顕著になった.前額・胸・背・前腕・大腿の皮膚血流量変化率(%LDF)の経時的変化には卵胞中期と黄体中期とも運動トレーニングの影響はみられなかった.下肢温浴終了直前10分間の局所発汗量(msw)は,両性周期とも胸・背・前腕でT群がU群より有意に高かった.汗の拍出頻度(Fsw)−Tb,msw−Fsw,%LDF−Tbの対応関係の検討から,女性の運動トレーニングは発汗・皮膚血管拡張機能を改善し,その改善は発汗機能では中枢機構および末梢機構の両活動性の亢進に,皮膚血管拡張機能では末梢より中枢機構の亢進に,それぞれ起因することが示唆された.さらに,運動トレーニングに伴う中枢機構の改善は,黄体中期における女性ホルモンの顕著な群差に起因し,発汗・皮膚血管拡張機能とも黄体中期により顕著になった.運動トレーニングに伴う末梢機構の改善には,発汗・皮膚血管拡張機能とも身体部位差が存在する可能性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第24巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 小倉幸雄*1,桑原智子*2,井上芳光*3
大学・機関名 *1 大阪国際大学短期大学部,*2 神戸大学大学院,*3 大阪国際大学

キーワード

若年女性運動トレーニング熱放散反応女性ホルモン発汗皮膚血管拡張