信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 肥満者の動脈硬化予防に対する運動トレーニングの新たな意義に関する検討-脂肪細胞由来抗動脈硬化性因子(アディポネクチン)に対する運動トレーニングの効果-

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.24 Vol.24

 本研究の目的は,有酸素運動トレーニングが運動耐容能の改善や体脂肪蓄積の改善を介して,脂肪細胞由来の抗動脈硬化性血漿蛋白アディポネクチンを増加させるとの仮説を検証することである.非活動的な中高年者を対象とし,有酸素運動1回30〜60分,週3回以上,3カ月間継続する運動群(14名)と,そのまま非活動的な生活習慣を3カ月間維持する対照群(12名)とに分けた.3カ月間の前後に最大酸素摂取量(VO₂max),体脂肪指標,血清脂質,血清アディポネクチン濃度を測定した.3カ月間の運動トレーニング後にVO₂maxは有意に増加,体重は有意に減少し,臍位の腹部断層写真により評価した内臓脂肪面積,皮下脂肪面積も有意に減少した.さらに,血清アディポネクチン濃度は運動トレーニング後に有意に増加した(5.2±2.2to5.9±2.6μg/ml; p<0.02).しかし対照群ではすべてのパラメーターにおいて変化が認められなかった.また運動トレーニング前後のVO₂max,体重,内臓脂肪面積の変化と血清アディポネクチン濃度の変化との間に有意な相関が認められた.以上より,有酸素運動トレーニングは運動耐容能の改善や内臓脂肪蓄積の改善を介して,アディポネクチン分泌を増加させることが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第24巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 髙波嘉一*1,下光輝一*1,川合ゆかり*1,木下藤寿*2,茂原治*2
大学・機関名 *1 東京医科大学,*2 財団法人和歌山健康センター

キーワード

有酸素運動運動耐容能体脂肪抗動脈硬化性血漿蛋白最大酸素摂取量