信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 被服による皮膚圧迫が体温調節反応に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.24 Vol.24

 本研究は,異なる吸湿性を持つ二種類の衣服による皮膚圧迫の有・無が,体温調節反応に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.室温25.0℃,湿度30%の実験室において,実験1では綿100%の半袖ノーカラーブラウスとショートパンツを着用した成人女子7名,実験2ではポリエステル(PE)100%製の同一被服を着用した成人女子9名を被験者として,圧迫なしの「ゆとり」条件と軽度の皮膚圧迫を生じさせた「圧迫」条件の二種類の実験を行った.「圧迫」条件における30ヵ所の被服圧は,平均で15mmHgであった.
 被験者は両下肢を膝下まで34℃の水槽に浸漬させて椅座安静を保持した後,15分かけて41℃に上昇させ,その後終了まで75分間41℃を維持し,計120分間の測定を行った.この間に皮膚温,
 皮膚血流量,被服内及び被服表面温・湿度,発汗量,直腸温,心拍数,血圧,主観的申告(温冷感,快適感,湿潤感)を測定した.皮膚圧迫の有無による体温調節反応への影響は,綿被服では直腸温の上昇は「圧迫」条件で高くなったが,体重減少量(汗蒸発量)に差は認められなかった.発汗量と皮膚血流量はともに「圧迫」条件で胸,上腕では抑制され,大腿では促進した.皮膚温は「圧迫」条件で発汗前には抑制傾向であったが,発汗後には反対に促進した.綿被服着用時の皮膚圧迫は,生体への温熱負荷は大きくなることが判明した.
 これに対して,PE被服では直腸温の上昇が「圧迫」条件で抑制されたことから,皮膚圧迫による生体への熱負荷は軽減することが判明した.皮膚血流量,発汗量,体重減少量(汗蒸発量)および皮膚温上昇は「圧迫」条件で促進した.
 以上の結果から,被服による皮膚圧迫が体温調節反応に及ぼす影響は,被服のもつ吸湿性の差によって大きく異なることが判明した.

「デサントスポーツ科学」第24巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 平田耕造,上地歩美,中野佳子,田中絵美子,吉田美奈子
大学・機関名 神戸女子大学

キーワード

皮膚圧迫体温調節反応ポリエステル皮膚温皮膚血流量発汗量温熱負荷