地面反力からみたランニングシューズの緩衝機能差とその差への適応的変化について
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.25 Vol.25】
地面反力はランニングシューズの動的機能の評価のためによく利用される.本研究では,地面反力を使用してランニングシューズの機能評価を行う際の方法論的問題点について実験的に調べることを目的とした.12名の中長距離ランナーに緩衝特性の異なる2種類のシューズを着用させ,フォースプレート上での実走試験を実施した.地面反力から得られる21の時間および力指標について評価した.まず,標準得点の推移に基づいて適切な評価を可能にするための必要最小限の試行数を調べた.その結果,各シューズにつき最低22試行が必要であることが明らかとなった.次に,異なる緩衝特性のシューズの違いが各指標の個人内および個人間の変動性に及ぼす影響について調べた.その結果,緩衝特性差によって変動性が変化しないことが明らかとなった.一般に柔らかい底材ほど走りが不安定になると言われるが,地面反力指標にはそのような傾向は認められなかった.地面反力指標の同日内変動と異日間の変動の比較では,異日間の変動が同日内での変動に比べて4倍程度大きいことが明らかとなった.異なる日に測定されたデータは,同じランナーでも異なった結果をもたらす可能性があることが示唆された.異なる緩衝特性のシューズへの適応についても地面反力の観点から調べた.その結果,異なる緩衝特性のシューズを着用した約10試行(10分間)後にはそのシューズに適応することが明らかとなった.したがって,シューズの緩衝特性の差は,着用直後の方が顕著であり,ランナーが時間とともに走り方を調節し緩衝特性差が見えにくくなるためである.実走試験においてはこのようなランナーの適応性を考慮に入れてデータを解釈する必要があることが示唆された.
「デサントスポーツ科学」第25巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
「デサントスポーツ科学」第25巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 木下博*1,青木朋子*2,生田香明*1 |
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大学・機関名 | *1 大阪大学, *2 大阪大学大学院 |
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