信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 運動療法による降圧効果出現機序の解明−Force-Arterial pressure応答定量化装置の開発−

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.25 Vol.25

 本研究では等尺性漸増負荷運動時の動脈圧応答(Force-Arterial pressure)をbeat by beatで測定し,さらに心機能を同位相で記録し,等尺性負荷漸増運動時の血圧上昇が心拍出量の増加に起因するのか,末梢血管抵抗増大に起因するのかを鑑別する装置の開発を試みた.被験者は健康な男性27名(23〜73歳)とし,平均年齢(41.8歳)を境として若齢群(Y群)と中・高年齢群(MO群)の2群に分けた.被験者は12.5,25,37.5,50,62.5,75%MVCでの等尺性掌握運動を椅座位で1分間行わせた.本研究の全被験者27名のうち等尺性漸増負荷運動時のデータ全てが得られた者は12名であり,これら12名のデータについて整理した.若齢群,中・高年齢群のSBP,DBP,MBPはいずれも負荷強度漸増に随伴して上昇した,動脈圧応答(CF-AP)を25%〜62.5%MVC時のForceに対する血圧の変化量(△AP/Force)として定量した結果,CF-SBP,CF-DBP,CF-MBPは若齢群(n=6)に比べ中・高冷群(n=6)で高値蛍光を示し,両群間に有意差はなかった.安静時のCOは若齢群に比べて中・高齢群で低く,また運動中は両群ともに変化がみられなかった.安静時TPRは若齢者に比較し中・高齢者の値が有意に高値であった.等尺性斬増不可運動時のTPRは,若齢群では,MVC発揮時に,中・高齢群では67.5%および75%MVC発揮時に有意な上昇を示した.
 以上のことから,等尺性斬増不可運動時の動脈圧応答は加齢に伴って亢進し,その原因は抹消血管抵抗の増大であることが示唆された.またこれらの結果から,本研究で試作した装置システムは,動脈血圧応答と循環応答を同位相で定量し個々人の等尺性斬増負荷運動時における動脈血圧応答の要因を鑑別する方法として有益であると考えられた.さらに,等尺性斬増負荷運動時でより安定した測定値が得られるbeat by beatによる橈骨動脈血圧および心機能測定装置の開発が期待されるとともに,測定条件を工夫する必要性が示唆された.

「デサントスポーツ科学」第25巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 清野哲也*1,鈴木政登*2,須藤正道*2,横田邦信*2
大学・機関名 *1 木更津工業高等専門学校,*2 東京慈恵会医科大学

キーワード

等尺性漸増負荷運動動脈圧応答(Force-Arterial pressure)心機能血圧末梢血管抵抗