信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 高齢者における客観的に測定された身体活動指標の規定要因を解明するための前向き研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.25 Vol.25

 目的:高齢者における定期的な身体活動は,健康的な加齢,身体機能の改善および疾病の予防を促進する.しかしながら,高齢者における定期的な身体活動の規定要因はあまり理解されていない.本研究は,日本人高齢者を対象に,健康日本21の身体活動・運動分野における歩数の目標値を満たす水準での身体活動の規定要因を見極めることを試みた.方法:本研究は,前向き研究デザインを採用した.データは,群馬県吾妻郡中之条町で実施した高齢者の身体活動と健康に関する疫学研究の一部として収集された.137名の高齢者が,2002年6月に次の要因を測定するための調査票に回答した:人口統計学および生物学的要因(性,年齢,婚姻状況,BMI),行動的要因(喫煙習慣,飲酒習慣),心理的要因(運動セルフ・エフィカシー),社会的要因(運動ソーシャルサポート,医療従事者による運動の勧め)および環境的要因(自宅周辺運動環境の認知).身体活動水準としての日歩数データは,2002年7月から2003年7月まで,加速度センサー付電子歩数計を用いて収集された.身体活動水準は,2群に分けられた:高活動群は日歩数の数値目標を満たしている者,低活動群は数値目標を満たしていない者であった.客観的に測定された身体活動の規定要因を見極めるために,カイ二乗検定,t検定およびロジスティック回帰分析を行った.結果:本研究参加者の47%が高活動群に属し,53%が低活動群であった.カイ二乗検定およびt検定の結果,日歩数の目標値を満たすことと,年齢(p<0.01)および運動セルフ・エフィカシー(p<0.01)との間に有意な関係があることが示された.ロジスティック回帰分析の結果,高活動群は低活動群と比較して,セルフ・エフィカシーを高く評価し(オッズ比=1.16),自宅周辺環境に対して肯定的な評価をする(オッズ比=1.43)ことが示唆された.結論:身体活動の規定要因を正しく理解することによって,健康増進に関わる専門家は身体活動の推進に対する働きかけを改善させることができる.本研究の結果は,身体活動介入を計画する際に有効であろう.高齢者の身体活動を推進させるための介入では,運動に関連したセルフ・エフィカシーを高め,運動するために適した自宅周辺環境への気づきを促すよう努めるべきである.

「デサントスポーツ科学」第25巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 岡浩一朗,東郷史治,青栁幸利
大学・機関名 東京都老人総合研究所

キーワード

高齢者身体活動加齢規定要因生物学的要因行動的要因心理的要因社会的要因