信州大学 繊維学部技術データベース

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PDF 環境の湿度変化がスポーツウエア着用時における運動時の体温調節反応に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.25 Vol.25

 環境の湿度変化がスポーツウエア着用時における運動時の体温調節反応に及ぼす影響を検討するため,6名の健康な男子が心拍数約130拍/分の自転車運動を50分間実施した.環境条件は低湿度(LH,環境温26℃,相対湿度30%)と高湿度(HH,環境温26℃,相対湿度70%)とし,衣服の種類は綿100%(100C)布と綿65%ポリエステル35%(65C35P)混紡布のTシャツ2種類とした.全ての被験者は各実験においてランニング用パンツとTシャツのみを着用した.循環調節パラメータにおいてはLHとHHで有意な差はなかったが,衣服内の皮膚温がHHではLHより高い傾向にあった.また,これらのパラメータは異なる繊維素材間でも顕著な差は認められなかった.HHでの平均皮膚温(Tsk)と衣服内平均皮膚温(IC-Tsl,腹,胸,背および上腕)はLHより有意に高かった(p<0.05).さらに,衣服内の背部での発汗量(SR)と皮膚血流量(SkBF)および全身体重減少量は湿度の上昇とともに多くなる傾向にあった.衣服内湿度が70%に達するときのSRおよびSkBFはHH100CでLH100Cより有意に低かった(p<0.05).衣服内湿度が70%に達するときの時間も有意に短かった(p<0.05).LHでの運動におけるTskおよびIC-Tslは衣服の種類に影響されなかったが,HHでは100Cのこれらの値は65C35Pより有意に高かった(p<0.05).衣服内湿度が70%に達するときのSR,SkBFおよび時間はHHにおいてのみ100Cで65C35Pより有意に低かった(p<0.05).これらのことから,綿100%布と綿65%ポリエステル35%混紡布のいずれも高湿度では低湿度より皮膚温が顕著に増加し,また,後者の布は高湿度での体温調節反応(皮膚温)と衣服内環境の変化を抑制したが,低湿ではその抑制は認められなかった.

「デサントスポーツ科学」第25巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 井上真理,柳本周治,桑原智子,山田由佳子,近藤徳彦
大学・機関名 神戸大学

キーワード

環境の湿度スポーツウェア(スポーツウエア スポーツ衣料)体温調節反応発汗量皮膚血流量