信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 高齢者を中心とした身体能力の向上

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.25 Vol.25

 高齢者では身体能力が低下し,糖・脂質代謝異常やインスリン抵抗性がみられることは周知の事実である.本研究の目的は,高齢者が自宅で実施可能なレジスタンストレーニングが高齢者の身体能力に及ぼす影響を追及することと,高齢者の身体能力を向上させうる運動処方の開発である.211名の健康高齢者が研究に参加し,3カ月間のレジスタンストレーニング前後で,体力測定や糖・脂質代謝変動につき検討を加えた.他の24名の高齢糖尿病患者が3回で1クールとなる運動教室を受講し,各運動プログラム前後に血糖測定を行ない,教室終了6カ月後に諸検査を実施するとともに,文書によるアンケート調査を行なった.以下の結果が得られた.
 ①136名の健康な高齢者での検討ではレジスタンストレーニング後,HDL-コレステロールが有意に上昇し(60±14→62±15mg/dl,p<0.001),中性脂肪が有意に低下した(125±70→111±55mg/dl,P<0.05).また,総コレステロール220mg/dl以上の高脂血症患者では,総コレステロールも有意に低下した(248±21→239±29mg/dl,p<0.05).また,正常血糖クランプによりインスリン感受性も改善した.
 ②75名の高齢者での検討により,レジスタンストレーニングの実施は,長座位体前屈,最大1歩幅,身体反応時間およびバランス保持機能など高齢者の生活活動能力の維持,向上に有用であることが判明した.
 ③24名の糖尿病患者に軽運動を実施させた運動教室は,高齢糖尿病患者の運動後の血糖値を低下させ,また,運動習慣の定着に有用であることが示唆された.以上の事実は,home-basedのレジスタンストレーニングの実施は,高齢者,高齢糖尿病患者の身体能力の維持,向上に有用であることを示唆している.

「デサントスポーツ科学」第25巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 佐藤祐造*1,長崎大*1,島岡清*2,徳留みずほ*2
大学・機関名 *1 愛知学院大学,*2 名古屋大学

キーワード

高齢者身体能力糖・脂質代謝異常インスリン抵抗性レジスタンストレーニング