野球選手の着衣条件からみた熱中症予防に関する研究(アンダーシャツ素材を中心に)

　スポーツ活動時の熱中症発生率の最も高い野球のアンダーシャツに焦点をあて，近年開発されているポリエステルアンダーシャツの熱中症予防に関する有効性を体温調節反応から解明することを目的として暑熱環境下における運動負荷実験を行った．実験１では着衣条件を上半身裸体，ポリエステル素材のアンダーTシャツ（PE），従来の綿素材のアンダーTシャツ（CT）（ともに下半身は競泳パンツ）の比較を行った．その結果，CTは裸体条件と比較して体温がより上昇したが，PEでは体温上昇の抑制効果が示された．これは主に総発汗量が裸体＜PE＝CTであったが，発汗効率がとくにCTにおいて低下し，PEではその低下を軽減する効果が認められたことによるものであった．実験２では着衣条件をよりスポーツ活動現場に近い設定として，下半身はユニフォーム，上半身は裸体，ポリエステルアンダーシャツにTシャツ重ね着，綿アンダーシャツにTシャツ重ね着の3条件の比較を行った．その結果，実験１で示されたようなポリエステルアンダーシャツの体温上昇抑制効果は消失した．この結果は，アンダーシャツにユニフォームを重ね着していることが主原因であり，今後この重ね着について検討することが熱中症の予防に必要であると考えられた．

「デサントスポーツ科学」第26巻/公益財団法人石本記念デサントスポーツ科学振興財団

研究者名	田中英登，薩本弥生
大学・機関名	横浜国立大学

キーワード

熱中症、野球、ポリエステルアンダーシャツ、体温調節反応

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