信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 廃材イグサを利用した上衣の快適衣服内環境の感性工学的検証

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.26 Vol.26

 自然素材を有効利用したイグサ繊維について製品開発を行い,このイグサの含有の有無が温熱生理反応に及ぼす影響と衣服着用による快適性について感性工学的検討を行った.温熱負荷直後の−Tsk(平均皮膚温)の上昇はイグサ混紡の方が綿100% に比べて急峻な傾向にあったが,負荷終了直前ではむしろ綿100%の方が高かった.回復期にはイグサ混紡のT ̅skは綿100% に比べてその減衰が緩徐であった.一方,Tcore(深部体温)は若干異なる傾向にあり,非着用条件で温熱負荷後半高い傾向にあった.発汗反応は綿100%よりイグサ混紡の方が低く,温熱負荷後半で綿100%の発汗量が高い傾向にあった.このことから,衣服着用時の発汗反応にはTcoreよりもT ̅skの修飾が大きかったものと推察される.背部の衣服内温度は,温熱負荷後半イグサ混紡で有意に高く,衣服内温湿度は回復期においてイグサ混紡の方が有意に高かった.このことは素材の保温性に起因するものと考えられる.主観的感覚の温冷感は皮膚温の変化,湿潤感は発汗反応,快適感は衣服内温・湿度の変化にそれぞれ対応していることが示唆された.以上のことから,イグサ混紡素材は,生体への温熱ストレス変動を大きく緩和する衣服素材として,例えば高齢者の冬季シャツあるいは登山トレッキング用上衣としての応用が期待できよう.

「デサントスポーツ科学」第26巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 福岡義之*1,兼子良子*2,田北智瑞子*3
大学・機関名 *1 熊本県立大学,*2 尚絅短期大学,*3 福岡女子短期大学

キーワード

イグサ温熱生理反応快適性温熱負荷平均皮膚温衣服内